小原崇史公認会計士事務所

【税理士解説】回収できない売掛金、貸倒損失で落とせる?3つの要件と計上時期

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【税理士解説】回収できない売掛金、貸倒損失で落とせる?3つの要件と計上時期

【税理士解説】回収できない売掛金、貸倒損失で落とせる?3つの要件と計上時期

2026/08/12

【税理士解説】回収できない売掛金、貸倒損失で落とせる?3つの要件と計上タイミング

渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。

取引先が倒産した、あるいは何度督促しても売掛金が支払われない——。「もう回収できないのだから、損失として経費に落とせるはず」とお考えの経営者の方は多いのですが、実はその処理、税務上のタイミングや要件を満たしていない可能性があります。貸倒損失(かしだおれそんしつ:回収できなくなった債権を損金に計上すること)は、法人税法上、認められる場面が明確に限定されており、要件を満たさないまま計上すると税務調査で否認され、かえって追徴を受けるリスクがあります。本記事では、貸倒損失が認められる3つの類型と、それぞれの要件・計上時期・必要な証拠書類を、中小企業の経理担当者・経営者向けに整理します。

 

1.貸倒損失は「3つの類型」でしか認められない

結論から申し上げると、貸倒損失は法人が「損したと感じたタイミング」で自由に計上できるものではありません。その前提として、法人税法では、金銭債権(売掛金や貸付金など、お金を受け取る権利)について評価損を計上することは原則として禁止されています(法人税法第33条第1項)。つまり「回収が怪しくなってきたので、債権の一部を減額して損失にする」という部分的な貸倒れ(部分貸倒れ)は認められていません。

この考え方を受けて、法人税基本通達(国税庁が定める税務の取扱い指針)は、貸倒損失を認める場面を次の3つの類型に限定しています。

① 法律上の貸倒れ(法基通9-6-1)……法律上、債権そのものが消滅した場合

② 事実上の貸倒れ(法基通9-6-2)……債権は残っているが、全額回収できないことが明らかな場合

③ 形式上の貸倒れ(法基通9-6-3)……売掛債権に限り、一定の形式要件を満たした場合

なお、貸倒損失とよく混同されるものに貸倒引当金(かしだおれひきあてきん:将来の貸倒れに備えてあらかじめ見積りで計上する準備金)があります。貸倒損失が「回収不能が確定した債権を損金にする」ものであるのに対し、貸倒引当金は「まだ回収不能とは言い切れないが、将来に備えて見込みで計上する」ものです。全額回収不能とまでは言えず一部回収の見込みがある場合には、貸倒損失ではなく個別評価金銭債権に係る貸倒引当金(法人税法施行令第96条第1項)の計上を検討することになります。ただし、貸倒引当金を計上できるのは、原則として銀行・保険会社や中小法人等に限られる点にご注意ください。

2.【法律上の貸倒れ】債権が消えた分を落とす(法基通9-6-1)

法律上の貸倒れは、法的な手続などによって債権そのものが消滅したケースで、その消滅した金額を貸倒れとして損金に算入します。具体的には、次のいずれかの事実が発生した場合が該当します。

① 更生計画認可の決定または再生計画認可の決定(会社更生法・民事再生法)により切り捨てられた金額

② 特別清算に係る協定の認可の決定(会社法)により切り捨てられた金額

③ 法令によらない関係者の協議決定(債権者集会の協議決定や、行政機関・金融機関その他の第三者のあっせんによる協議で、合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの)により切り捨てられた金額

④ 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合に、その債務者に対し書面により明らかにした債務免除額

①②のような法的整理手続に基づく切捨ては、裁判所の監督のもとで「債権の切捨て」という手続がとられるため、貸倒れとして損金になること自体が問題になることは通常ありません。ポイントは計上する時期で、原則として認可決定のあった日の属する事業年度の損金となります。仮に認可決定等の事実を知らずに確定申告をしてしまい、後の事業年度で気づいた場合は、気づいた年度で損金算入するのではなく、更正の請求(払いすぎた税金の還付を求める手続)によることになります。

③の関係者の協議決定については、「合理的な基準」によることが前提です。合理的な基準とは、すべての債権者について同一の条件で定めることを基本としつつ、債権の発生原因・債権額の多寡・債権者と債務者の関係などを総合的に協議して切捨額が決められている場合を指します(国税庁 質疑応答事例「子会社等を整理・再建する場合の損失負担等」)。逆に、こうした要件を満たさない単なる債権放棄は、後述する債務超過で全額回収不能が明らかな状況でない限り、寄附金として認定されるおそれがあります。取引先を助けるつもりの安易な債権放棄が、寄附金扱いで損金にならないという結果を招きかねない点に注意が必要です。

なお、法律上の貸倒れ(①〜④のいずれも)は、後述する事実上・形式上の貸倒れと異なり、損金経理(会社の帳簿上で費用として処理すること)が要件とされていません。上記の事実が生じた事業年度に、その金額が当然に損金の額に算入されます。

 

3.【事実上の貸倒れ】全額回収不能が「明らか」なとき(法基通9-6-2)

事実上の貸倒れは、法律上は債権が残っている(消滅していない)ものの、債務者の資産状況・支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合に、その明らかになった事業年度で貸倒れとして計上できる取扱いです。ここでは3つの実務ポイントを押さえてください。

第一に、損金経理が必要です。法律上の貸倒れの切捨て型と異なり、会社の帳簿でその事業年度に費用として処理していなければ認められません。

第二に、担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ計上できません。また、保証人が付いている場合の保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にできません。全額回収不能が前提である以上、担保や保証による回収可能性が残っているうちは「全額回収不能」とはいえないためです。担保の実質的な価値が問題となる個別のケースもありますが、原則はあくまで担保物を処分した後であり、自己判断で処分前に計上するのは避けてください。また、担保物はあるがその処分に時間がかかるという場合には、貸倒引当金の適用対象となる法人であれば、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金(法人税法施行令第96条第1項)の計上を検討することになります。

第三に、計上する時期を誤ると否認されます。「全額が回収できないことが明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる」とされているため、明らかになった年度に計上せず、翌事業年度以降に持ち越して計上すると、その遅れを理由に否認の対象になり得ます。「事実上の貸倒れ」は、法律的には債権が消滅していなくても経済的に全額回収不能であることを納税者側が立証する必要があり、その立証責任はより厳格に求められます。破産・強制執行・債務整理・死亡・行方不明・債務超過・天災事故・経済事情の急変などの事実に照らして判断されます。

実務で判断に迷いやすいのが取引先が破産したケースです。破産手続には、会社更生法や民事再生法のような「債権の切捨て」という考え方がもともとないため、裁判所の終結決定があっても法律的には債権は消滅しません(法人は廃止決定または終結決定によって登記が閉鎖され消滅しますが、個人の場合は免責許可決定によって責任を免除されるという違いがあります)。そのため、破産手続では「いつ回収不能が明らかになったか」を見極める必要があります。実務上は、破産手続の廃止決定または終結決定により法人が消滅した時点で、回収不能が明らかになったと考えられます。加えて、終結決定前であっても、破産管財人から配当金額がゼロであることの証明がある場合や、証明が受けられなくても債務者の資産処分が終了し回収が見込まれないまま相当な期間がかかるときは、その時点で法人税基本通達9-6-2を適用して貸倒損失を計上することも認められます。逆に配当が見込まれる場合は、配当見込額を除いた部分について貸倒引当金で対応することになります。

 

4.【形式上の貸倒れ】売掛金だけに使える特例(法基通9-6-3)

形式上の貸倒れは、売掛債権に限って、形式的な要件を満たせば貸倒れを認めるという特例的な取扱いです。売掛債権は反復的・継続的に発生し、担保による保全を行うことが少ない実情を考慮したものです。対象は売掛金・未収請負金その他これらに準ずる債権であり、貸付金その他これに準ずる債権は対象外である点がまず重要です。認められるのは、次の①または②のいずれかに該当する場合です。

取引停止後1年以上経過した場合:継続的な取引を行っていた債務者について、その資産状況・支払能力等が悪化したため取引を停止し、(イ)取引を停止した時、(ロ)最後の弁済期、(ハ)最後の弁済の時、のうち最も遅い時から1年以上経過したとき(その売掛債権について担保物のある場合を除く)。起算点を最も遅い時で判定するため、これらのいずれかが当期に含まれていると適用できません。また、あくまで「継続的な取引を行っていた得意先」が対象であり、不動産取引のようにたまたま一度だけ取引した相手に対する売掛債権は対象外です。

取立費用に満たない場合:同一地域の債務者に対して有する売掛債権の総額が、その取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合で、その債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき。同一地域に複数の債務者がいるときは、それらに対する売掛債権を合計して判定します。取立費用は通常は主に交通費ですが、遠隔地で宿泊を要する出張になるなら宿泊代も加味して見積もります。この②では、①と違って債務者の資産状況の悪化は直接の要件ではなく、「取り立てる方が費用倒れになる」という債権者側の事情から認められています。なお、①の取引停止後1年以上のケースでは、少額の回収があった場合や手形のジャンプ(支払期日の延期)があった場合に、起算点の判定が実務上問題になりやすい点にも留意が必要です。

そして形式上の貸倒れで最も重要な要件が、備忘価額(びぼうかがく)を残すことです。売掛債権の額から備忘価額を控除した残額を損金経理しなければならず、備忘価額(実務上は1円とすることが一般的)を残すことが要件です。これは、法律上はまだ存在している売掛債権を特例的に貸倒れとして認める取扱いであるため、その後の回収の有無を管理できるよう、得意先元帳を閉鎖せずに残しておく趣旨です。もし備忘価額を付した債権について後日弁済を受けたときは、(借方)現預金/(貸方)償却債権取立益として、その弁済を受けた事業年度の益金に算入します。その後、全額の回収が見込まれないと判断された時点で、備忘価額を落として得意先元帳を閉鎖しても差し支えないと考えられます。なお、この類型も損金経理が要件であり、事実が発生した年度に処理せず翌年度以降に持ち越すと、所得操作によるものかどうかを問われることになります。

 

5.債務免除で落とすときの実務ポイント(書面・内容証明・行方不明)

債務免除によって貸倒れを計上する場合、鍵になるのは「債務免除の通知がいつ相手に到達したか」です。民法第97条は「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と定めており、債務免除の効果(=債権の消滅)は通知が相手に到達した時点で生じます。したがって、税務調査に備え、債務免除をした証拠を残すことが必須で、一般には内容証明郵便の形式で行われます。

もっとも、内容証明郵便は相手が受け取らなければ届かず、受取拒否や不在によって「到達」がなかったとされるおそれがあります。この点、「到達」とは、相手方が実際に受領したり内容を了知したりすることまでは必要なく、通知を記載した書面が相手方のいわゆる支配圏内(了知できる状態)に置かれれば足りると解されています。実務では、内容証明郵便と同一内容の文書を特定記録郵便でも発送し、内容証明の文末にその旨を付記して封筒に日付を記載・コピーを保存しておくと、相手が不在でもポストに投函されるため「支配圏内に置かれた」と評価しやすくなります。

債務者が行方不明の場合は、内容証明郵便が返送されて到達しません。この場合、民法第98条の公示による意思表示(公示送達)を利用する方法があります。裁判所の掲示場への掲示と官報掲載を行い、最後に官報に掲載した日から2週間の経過をもって相手に到達したものとみなされる制度で、裁判所が到達証明書を発行します。申請時には相手方の所在についての調査報告書の提出が必要で、官報掲載などの費用がかかります。ただし、相手方の所在を知らないことに過失があったと判断されると到達の効力を生じないため(民法第98条第3項ただし書)、本当に所在がわからない場合の証拠として利用するものと考えるべきです。

このほか、判断に迷いやすいのが「相当期間」と「債務超過」の意味です。債務超過の状態が継続する「相当期間」には明文の定めがなく、3〜5年程度とする解説もありますが、一律に年数で形式的に区切るべきものではなく、回収を断念せざるを得ないと判断する期間は状況によって異なると考えられます。また「債務超過」は時価ベースで判断すべきで、清算貸借対照表を作成したときに債務超過となるようなケースに限られると解されます。

 

6.税務調査で否認されないための証拠書類

貸倒損失は税務調査で重点的に確認される項目であり、「回収できなかった」という事実を客観的な書類で示せるかが否認されないための分かれ目になります。整えておくべき書類は、大きく2種類に分かれます。

一つ目は、債権の存在を証する書類です。売掛債権であれば売買契約書・請書・納品書・請求書・検収書・売掛台帳・受取手形など、請負であれば工事請負契約書・見積書、貸金であれば金銭消費貸借契約書、といった債権の発生と金額を裏づける資料です。担保・保証がある場合は、連帯保証書・担保提供書・抵当権設定契約書・登記簿謄本なども該当します。

二つ目は、回収不能となった原因を証する書類です。たとえば不渡手形(銀行の付箋付き)、手形交換所の取引停止処分証明書、債権放棄の内容証明書、督促状や催告書、会社更生計画・民事再生計画の認可決定の写し、特別清算の決定書写し、破産宣告書の写し、債権者集会の協議決定書、債務者の決算書などが挙げられます。

類型別に、立証で問題になりやすいポイントも押さえておきましょう。まず債務免除のケースでは、債務者が債務超過かつ支払不能であることをいかに立証するかが重要で、債務者の決算書や信用調査機関の報告書を備えます。個人の行方不明・死亡のケースでは、督促状や内容証明が返送された事実、死亡により営業が存在しなくなった事実を示す資料が必要です。取引停止後1年以上のケースでは、督促状などによって回収努力を十分に行ったことを示し、取立費用が売掛債権を上回るケースでは、回収に要する費用の見積書を作成しておきます。書類は「後から作る」ものではなく、貸倒れを計上する時点で揃えておくことが肝心です。

 

まとめ

回収できない売掛金があるとき、まず確認すべきは「どの類型に当てはまるか」です。法的整理などで債権が切り捨てられたのか(法律上の貸倒れ)、債権は残っているが全額回収不能が明らかなのか(事実上の貸倒れ)、それとも売掛金について取引停止から1年以上が経過したのか(形式上の貸倒れ)。類型によって、損金経理の要否・計上できる時期・備忘価額の要否が変わります。そのうえで、①該当する類型の要件を満たしているかを確認し、②回収不能を裏づける証拠書類をそろえ、③計上できる事業年度を逃さないこと。この3点が実務の要です。特に「明らかになった年度に計上する(事実上の貸倒れ)」「備忘価額を残す(形式上の貸倒れ)」の2つは、うっかり外すと否認につながります。判断に迷う場合は、自己判断で計上する前に専門家へご相談ください。

「取引先が倒産したが、いつ貸倒損失を計上すればよいかわからない」「督促しても支払われない売掛金を経費に落とせるか知りたい」「債務免除の通知の出し方や証拠の残し方が不安」——といったご相談は、渋谷区恵比寿の税理士法人小原会計までお気軽にお問い合わせください!

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