【税理士解説】居住者・非居住者の判定基準|課税される所得の範囲が変わります
2026/08/13
【税理士解説】居住者・非居住者の判定基準|課税される所得の範囲が変わります
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
海外赴任、外国人従業員の採用、経営者ご自身の海外移住——。国際的な人の動きが増えるなかで、「住民票を海外に移せば非居住者」「日本に半年(183日)いなければ非居住者」といった理解をよく耳にします。しかし、所得税における居住者・非居住者の判定は、住民票や滞在日数だけで決まるものではありません。そして、この判定を誤ると、日本で課税される所得の範囲が根本から変わってしまいます。本記事では、居住者・非居住者の判定基準と課税範囲の違いを、中小企業・スタートアップの経営者や経理担当者向けに整理します。
1.居住者か非居住者かで「課税される所得の範囲」が変わる
結論からお伝えすると、居住者か非居住者かによって、日本で課税される所得の範囲がまったく変わります。所得税法は、個人を大きく次の3つに区分しています(所得税法第2条第1項)。
① 居住者(非永住者以外の居住者)……国内に住所があるか、現在まで引き続き1年以上居所がある個人のうち、下記②以外の人
② 非永住者……居住者のうち、日本国籍がなく、かつ過去10年以内に国内に住所または居所があった期間の合計が5年以下の個人
③ 非居住者……居住者以外の個人
そのうえで、課税される所得の範囲は次のように異なります(所得税法第5条・第7条)。
① 非永住者以外の居住者……国内・国外で生じたすべての所得(全世界所得)
② 非永住者……国外源泉所得以外の所得と、国外源泉所得のうち日本国内で支払われ、または日本国内へ送金されたもの
③ 非居住者……国内源泉所得(日本国内で生じた所得)のみ
つまり、同じ収入でも、居住者と判定されれば海外の所得まで日本で課税される一方、非居住者なら日本国内で生じた所得だけが対象になります。判定を誤れば、本来申告すべき所得の申告漏れや、逆に不要な二重課税につながりかねません。だからこそ、まず「自分(自社の従業員)がどの区分に当たるか」を正しく判定することが出発点になります。
2.判定の基準は「住所(生活の本拠)」と「1年以上の居所」
居住者かどうかは、①国内に「住所」があるか、②現在まで引き続いて1年以上「居所」があるか、のいずれかで判定します(所得税法第2条第1項第3号)。
ここでいう「住所」とは、住民票の所在地のことではなく、その人の「生活の本拠」を指します(民法第22条)。そして生活の本拠がどこかは、住居、職業、資産の所在、家族(生計を一にする配偶者その他の親族)の居住状況、国籍などの客観的な事実を総合的に勘案して判定します(国税庁タックスアンサーNo.2875・No.2012)。一方の「居所」は、生活の本拠とまではいえないものの、その人が現実に住んでいる場所をいいます。
ここで特に誤解が多いのが、いわゆる「183日ルール」です。「1年の半分(183日)以上日本にいれば居住者、いなければ非居住者」という理解が広がっていますが、日本の所得税では、滞在日数だけで居住者・非居住者を判定するわけではありません。国税庁も、複数の滞在地がある場合について、滞在日数のみによって判断するのではなく、生活の本拠が日本にあるかどうかで判定するとしています(No.2012)。日数はあくまで判断材料の一つにすぎない、という点を押さえてください。
なお、②の非永住者は、日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所・居所があった期間が合計5年以下という要件で区分されます(所得税法第2条第1項第4号)。外国人従業員のうち来日から一定期間内の方などが該当し、課税範囲が全世界所得ではなく限定される点で、実務上重要な区分です。
3.判定に迷うときの「住所の推定規定」(所得税法施行令第14条・第15条)
生活の本拠が国内か国外か判断が難しいケースに備えて、所得税法施行令には「住所の推定規定」が置かれています。
国内に住所があると推定される場合(所得税法施行令第14条)
来日などで国内に居住することとなった個人が、次のいずれかに当てはまると、国内に住所があると推定されます。
① 国内で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること
② 日本国籍があり、かつ国内で生計を一にする配偶者その他の親族がいることなど、職業や資産の状況からみて、継続して1年以上国内に居住すると推測するに足りる事実があること
この推定を受ける人と生計を一にして国内に住む配偶者などの親族も、同じく国内に住所があると推定されます。
国内に住所がないと推定される場合(所得税法施行令第15条)
海外赴任などで国外に居住することとなった個人が、次のいずれかに当てはまると、国内に住所がないと推定されます。
① 国外で継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること
② 外国の国籍があるか外国の永住許可を受けており、かつ国内で生計を一にする配偶者その他の親族がいないことなど、再び国内に戻って主に国内に居住すると推測するに足りる事実がないこと
たとえば「海外支店に3年間赴任する」といった辞令があれば①に当てはまり、非居住者と推定されます。ただし、これらはあくまで「推定」であり、実際の生活実態が異なれば覆ります。推定規定に形式的に当てはまるかどうかだけでなく、実態がどこにあるかが最終的な決め手になる点に注意してください。
4.二重居住になったら租税条約で最終調整する
判定の結果、日本と外国の両方で居住者と扱われてしまう「二重居住」が起こることがあります。各国が自国の国内法で判定するため、生活の実態が両国にまたがると、どちらの国からも居住者とされてしまうのです。
この場合、日本とその国との間に租税条約が結ばれていれば、その条約の定め(タイブレーカールール)によって、最終的にどちらの国の居住者とするかを調整します。国税庁は、個人については次の順序で判定するとしています(No.2875)。
① 恒久的住居(住まい)がある場所
② 利害関係の中心がある場所(人的・経済的により密接な国)
③ 常用の住居(日常的に住んでいる場所)がある場所
④ 国籍
これらの順に検討し、それでも決まらない場合には、両国の税務当局による相互協議が行われることもあります。このタイブレーカールールは租税条約に基づく仕組みであるため、実際にどのように調整されるかは、相手国との条約の有無やその内容によって変わります。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。
なお、非居住者と判定された場合でも、日本国内で生じた所得(国内源泉所得)については、その所得の種類に応じて日本での課税が生じます。居住者・非居住者の判定はあくまで出発点であり、その先の課税関係は所得の種類ごとに変わります。判定も課税範囲もケースごとに異なりますので、迷う場合は自己判断で処理せず、専門家にご確認ください。
まとめ
居住者・非居住者の判定は、住民票や滞在日数だけでは決まりません。ポイントは、①まず「生活の本拠(住所)」が国内にあるか、または引き続き1年以上の居所があるかで判定すること、②判断に迷うときは住所の推定規定(所得税法施行令第14条・第15条)と実際の生活実態を照らすこと、③日本と外国の双方で居住者となる二重居住は租税条約で調整すること、の3点です。海外赴任・海外移住・外国人従業員の採用の前に、まず居住者・非居住者のどちらに当たるかを確認しておくことで、思わぬ申告漏れや二重課税を防げます。
「海外赴任する従業員の給与の扱いがわからない」「外国人を採用したが、課税される所得の範囲がどうなるか知りたい」「自分が居住者か非居住者か判断がつかない」——といったご相談は、渋谷区恵比寿の税理士法人小原会計までお気軽にお問い合わせください!
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税理士法人小原会計/小原崇史公認会計士事務所
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