【税理士解説】みなし役員の判定基準|家族や相談役への賞与が損金にならない理由
2026/08/18
【税理士解説】みなし役員の判定基準|家族や相談役への賞与が損金にならない理由
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
「役員として登記していない社長の配偶者に賞与を出したら、税務調査で経費として認められなかった」
中小企業や同族会社では、こうしたケースが少なくありません。
原因は「みなし役員」です。役員として登記していなくても、法人税法上は役員として扱われる人がいて、その人への給与や賞与には、一般の従業員とはまったく違う厳しいルールが適用されます。知らないまま賞与を支給すると、その全額が損金(法人税の計算上の経費)に算入できないという事態になりかねません。
今回は、みなし役員の判定基準と、給与・賞与の取扱いで注意すべき点を、中小企業・スタートアップの経営者や経理担当者向けに解説します。
1.「みなし役員」とは──登記がなくても税法上は役員
まず押さえたいのは、「会社法上の役員」と「法人税法上の役員」は範囲が違うということです。会社法上の役員は、原則として登記された取締役や監査役などを指します。一方、法人税法上の役員は、取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事・清算人に加えて、これら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものまで含みます(法人税法第2条第15号)。
この「登記されていないのに法人税法上は役員として扱われる人」が、いわゆるみなし役員です。
とくに同族会社では、経営者とその家族が株主でもあり従業員でもある、という関係が生じやすく、「役員」と「使用人(従業員)」の線引きが曖昧になりがちです。そこで法人税法は、登記の有無や肩書きにかかわらず、実質的に経営に従事している一定の人を役員として扱い、役員給与のルールを及ぼすこととしています。
なぜこの区分が重要かというと、みなし役員に該当すると、その人への給与は「従業員の給与」ではなく「役員給与」として扱われるからです。役員給与には、あとで詳しく述べるとおり、損金に算入するための厳しい要件(法人税法第34条)があり、特に賞与(ボーナス)は原則として損金になりません。つまり、みなし役員かどうかの判定を誤ると、支給した給与・賞与が経費として認められず、想定外の法人税負担が生じるおそれがあるのです。
2.みなし役員に該当する2つのケース(法人税法施行令第7条)
みなし役員に当たるのは、法人税法施行令第7条が定める次の2つのケースです。いずれかに当てはまればみなし役員となります。
① 使用人以外の者で、経営に従事している人
取締役などの登記役員ではなく、また職制上の使用人(部長・課長などの従業員としての地位)でもない人で、その法人の経営に従事している人です(施行令第7条第1号)。たとえば、相談役・顧問・会長といった肩書きの人や、退任後も引き続き経営に関与している元社長などが、この類型に当てはまることがあります。
② 同族会社の使用人で、一定の持株要件を満たし、経営に従事している人
同族会社(少数の株主グループが支配する会社)の使用人のうち、次のイ〜ハの持株要件をすべて満たし、かつ経営に従事している人です(施行令第7条第2号、第71条第1項第5号)。
イ 株式の所有割合が大きい株主グループから順に並べたとき、第1順位(その割合が50%超のとき)、第1・第2順位の合計で初めて50%超になるとき、または第1〜第3順位の合計で初めて50%超になるときの、いずれかの株主グループに属していること
ロ その人が属する株主グループの所有割合が10%を超えていること
ハ その人(配偶者、およびこれらの人が50%超を保有する会社を含む)の所有割合が5%を超えていること
たとえば、社長が株式の80%、その配偶者が10%を保有し、配偶者が従業員として経営にも関わっている場合を考えます。この配偶者は、50%超の第1順位グループに属し(イ)、属するグループの所有割合が10%超で(ロ)、本人の所有割合も5%超(ハ)を満たすため、みなし役員に該当し得ます。このように、一般の従業員であっても、社長の親族で株式を一定以上持ち、経営にも関わっていれば、この②に該当してみなし役員となる可能性があります。中小の同族会社では見落とされやすいポイントです。
3.判定のカギ「経営に従事している」とは
2つのケースに共通するのが「経営に従事している」という要件です。ところが、この「経営に従事」には法令上の明確な定義がなく、実態に即して総合的に判断されます。
一般には、次のような会社の重要な意思決定に実質的に関わっているかどうかが判断の目安になります。
①資金繰りや借入など財務に関する決定、②従業員の採用や給与など人事に関する決定、③重要な販売・仕入れなどの取引契約の決定、④経営方針や事業計画の決定、といった事項です。
これらに継続的に関与していれば、肩書きが「従業員」でも経営に従事していると判断されやすくなります。
重要なのは、肩書きや登記の有無ではなく実態だという点です。たとえば、社長の配偶者が経理・資金管理を一手に握り、資金繰りや借入の判断に関与しているようなケースでは、役職が「経理担当」であってもみなし役員と判断されることがあります。
逆に、単に事務作業を担当しているだけで重要な意思決定に関与していなければ、経営に従事しているとはいえません。
この「経営に従事しているかどうか」は、税務調査でも争点になりやすい部分です。実際の職務内容や決裁の範囲、会議への関与などから総合的に判断されるため、あいまいなまま賞与などを支給すると、後日の指摘につながります。判断に迷う場合は、実際の職務内容を確認したうえで慎重に検討する必要があります。
4.みなし役員になると変わること──給与・賞与の損金算入
みなし役員に該当すると、その人への給与は役員給与として、法人税法第34条の損金算入ルールが適用されます。役員給与が損金に算入されるのは、原則として次の3つのいずれかに該当する場合に限られます(法人税法第34条第1項)。
① 定期同額給与……1か月以下の一定期間ごとに、毎回同じ額を支給する給与
② 事前確定届出給与……所定の時期に確定した額を支給する定めについて、あらかじめ税務署長に届け出た給与
③ 業績連動給与……利益などの指標に基づいて支給する給与。ただし、これを損金にできるのは非同族会社などに限られ、オーナーが株式を支配する中小の同族会社では原則として使えません
中小の同族会社で実際に使えるのは、ほぼ①か②です。ただし、いずれも支給のタイミングに厳しい制限があります。
①の定期同額給与は、事業年度の途中で自由に増減できるわけではなく、金額の改定は原則として事業年度開始の日から3か月を経過する日まで(=期首から3か月以内)に行う必要があります(施行令第69条第1項)。ただし、役員の職制上の地位の変更など(臨時改定事由)や、経営状況の著しい悪化により減額する場合(業績悪化改定事由)には、期中の改定も認められます。
②の事前確定届出給与の届出期限は、原則として、株主総会などで支給の定めを決議した日から1か月を経過する日と、事業年度開始の日から4か月を経過する日の、いずれか早い日です(新たに設立した法人は設立日から2か月を経過する日。施行令第69条第4項)。この期限を過ぎて届け出ても効力は認められません。
ここで特に注意したいのが賞与です。みなし役員に対して従業員と同じように賞与(臨時の給与)を支給しても、それは①の定期同額給与には当たりません。
②の事前確定届出給与として、支給の時期と金額をあらかじめ税務署に届け出ていなければ、その賞与は損金に算入できません。「決算賞与を役員登記のない親族にも出した」といったケースで、後から損金不算入を指摘されるのは、まさにこのためです。
さらに、上記のいずれかに該当する給与であっても、不相当に高額な部分の金額は損金に算入されません(法人税法第34条第2項、施行令第70条)。職務の内容や会社の収益、同業他社の支給状況などに照らして過大と判断される部分は、経費として認められないということです。
5.実務で気をつけるポイント(親族・相談役・顧問)
最後に、実務で特に注意したい場面を整理します。
第一に、同族会社の親族です。社長の配偶者や子などが「従業員」として働いていても、前述の持株要件を満たし経営に従事していれば、みなし役員に該当します。本人も会社も役員のつもりがないまま賞与を支給し、損金不算入を指摘される典型パターンです。株式の保有状況と職務の実態を、あらためて確認しておくことをおすすめします。
第二に、相談役・顧問・退任した社長です。登記上は役員を退いていても、引き続き経営の重要な意思決定に関与していれば、施行令第7条第1号のみなし役員に当たり得ます。名誉職のつもりの報酬が、役員給与として扱われることがあります。
第三に、使用人兼務役員との違いです。使用人兼務役員とは、部長・工場長などの使用人としての地位を併せ持つ役員のことで、使用人分の給与・賞与については、他の使用人と同じ時期・同じ基準で支給していれば損金に算入できます。ところが、代表取締役や専務・常務などのほか、同族会社で上記の持株要件を満たす役員は、そもそも使用人兼務役員にはなれません(法人税法第34条第6項、施行令第71条第1項第5号)。つまり、みなし役員が同族会社の持株要件で役員とされる場合、その人には「使用人分」という考え方が使えず、賞与を含めて役員給与のルールで判定されることになります。役員登記がないからと従業員扱いで賞与を出すと、この点で損金不算入となりやすいので注意が必要です。
まとめ
みなし役員は、「役員として登記していないから大丈夫」という思い込みが最も危険なところです。まず確認すべきは、①相談役・顧問・退任社長など、登記はないが経営に関与している人がいないか、②同族会社で、親族の従業員が持株要件(50%超グループ・10%超・本人5%超)を満たし経営に従事していないか、の2点です。そのうえで、みなし役員に該当する人へ賞与を支給するなら、事前確定届出給与として期限内に届け出ることが実務の要になります。判定も届出も個別性が高いため、迷う場合は自己判断で支給せず、専門家にご確認ください。
「役員登記していない親族への給与・賞与が経費になるか不安」「相談役・顧問への報酬の扱いを確認したい」「事前確定届出給与の出し方がわからない」といったご相談は、渋谷区恵比寿の税理士法人小原会計までお気軽にお問い合わせください!
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