【税理士解説】その電子データ、印刷して保存では不備かもしれません!電子帳簿保存法「電子取引データ保存」の要件と負担軽減策
2026/08/07
【税理士解説】その電子データ、印刷して保存では不備かもしれません!電子帳簿保存法「電子取引データ保存」の要件と負担軽減策
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
メールで届いた請求書PDFや、ネットで発行された領収書を紙に印刷してファイルするだけ――実はこの運用、電子帳簿保存法の要件を満たしていない可能性があります。令和5年末までの宥恕(ゆうじょ)措置は終了し、電子取引で受け取ったデータは「データのまま」保存することが、法人・個人を問わずすべての事業者の義務となりました。今回は、そのルールと無理なく対応するためのポイント、そして令和7年度改正で新設された「うれしい特例」までを解説します。
1.そもそも「電子取引」とは?紙に印刷して保存では認められません
電子帳簿保存法上の「電子取引」とは、請求書・領収書などの取引情報を電子データでやり取りする取引をいいます。具体的には、メールに添付されたPDFの請求書、Webサイトからダウンロードする領収書や購入明細、EDI取引、キャッシュレス決済のWeb明細などが該当します。
こうした電子取引で授受したデータは、その電子データのまま保存しなければなりません(電子帳簿保存法第7条)。紙に印刷して保存するだけでは要件を満たしません。令和4年1月からこの電子保存が義務化され、当初の宥恕措置も令和5年12月末で廃止されています。
なお、電子データで受け取った適格請求書(電子インボイス)も同じ扱いです。消費税の仕入税額控除のためにはインボイスの保存が必要ですが(消費税法第57条の4)、法人税・所得税の保存義務者でもある場合は、電子帳簿保存法の電子取引データ保存の要件に従って保存する必要があります。
2.守るべきは「真実性」と「可視性」の2つのルール
電子取引データの保存では、大きく2つの要件を満たす必要があります。
1つ目は、データが改ざんされていないことを担保する「真実性の要件」です。具体的には、①タイムスタンプが付された後にデータを授受する、②授受後おおむね2か月以内にタイムスタンプを付す、③訂正・削除の記録が残る(または訂正・削除ができない)システムを使う、④訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する――このいずれかを行います。特別なシステムがなくても、④の事務処理規程を整備すれば対応できます。国税庁がひな形を公表しているので、これを自社に合わせて整えるのが最も手軽な方法です。
2つ目は、後から内容を確認できるようにする「可視性の要件」です。パソコンやディスプレイ、プリンタなどを備え付けて画面や書面で速やかに確認できるようにし、あわせて取引年月日・取引金額・取引先の3項目で検索できる「検索機能」を確保します。
ただし、この検索機能には緩和措置があります。前々事業年度(個人は前々年)の売上高が5,000万円以下の事業者や、データを出力した書面を取引年月日・取引先ごとに整理して提示・提出できるようにしている事業者は、検索機能の確保が不要とされています。
3.要件を満たせないとき、そして令和7年度改正の新メリット
「すぐに要件をすべて満たすのは難しい」という場合の受け皿として、令和6年以降は新たな猶予措置が設けられています。相当の理由があると税務署長が認め、かつ税務調査等の際に、①データを出力した書面の提示・提出と、②データのダウンロードの求めの両方に応じられるようにしていれば、上記の保存要件によらず、電子取引データを単に保存しておくことが認められます。ただしこれはあくまで猶予措置であり、恒久的な運用としては本来の要件を満たすことが望まれます。
一方で、DX化を後押しする「攻めの」特例も登場しました。令和7年度税制改正では、請求書等のデジタルデータを自動で保存し、帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が新設されています。デジタルインボイス(Invoice JP PINT等)や預貯金口座の決済データを、国税庁長官の基準に適合するシステムで一定の要件により送受信・保存すると、そのデータに関する隠蔽・仮装への重加算税10%加重の対象から除外され、あわせて青色申告特別控除も受けられます。適用にはあらかじめ届出書の提出が必要で、重加算税の加重除外は令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から、青色申告特別控除は令和9年分以後の所得税から適用されます。
まとめ
電子取引データの「データ保存」は、規模の大小にかかわらずすべての事業者に共通する義務です。まずは自社が電子でやり取りしている請求書・領収書を洗い出し、保存場所と検索方法、事務処理規程を整えるところから始めましょう。さらに会計までデジタルで連携できれば、事務負担の軽減と税制上のメリットの両方が得られます。
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