法人の貸倒損失の正しい損金計上方法とは?
2024/12/13
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
法人が保有する金銭債権の貸倒損失を損金に計上するための条件や、損金に算入できる金額、時期について解説します。貸倒損失は、法人税の申告において適切に処理する必要があるため、条件を正しく理解しておくことが重要です。
1.貸倒損失が損金算入される条件と対象金額
貸倒損失は、以下のような事実が発生した場合、その金額を損金として計上できます。
①金銭債権の全部又は一部が切り捨てられた場合
以下の手続きや協議に基づき切り捨てられた金額は、切り捨てが行われた事業年度に損金算入されます。
・法的整理手続きに基づく場合
会社更生法、民事再生法、会社法などの規定に基づいて切り捨てられた金額。
更生計画認可や再生計画認可などの決定により免除された負債の金額が該当します。
・法的整理以外の合理的な協議による場合
債権者集会や行政機関、金融機関等の斡旋による協議により合理的基準で負債整理が行われた場合。
・債務者の債務免除
債務者が長期間にわたり債務超過状態であり、回収が不可能と認められる場合に書面で明確に免除された金額。
②金銭債権の全額が回収不能となった場合
債務者の資産状況や支払能力などから、金銭債権の全額が回収不能と認められる場合、その事業年度において損金として計上可能です。
ただし、以下の条件があります。
・担保物がある場合
担保物を処分し、その売却額を控除した残額を貸倒損失として計上。
・保証債務
保証債務は実際に履行された後でなければ貸倒損失として認められません。
③一定期間取引停止後に弁済がない場合
取引停止後、弁済がなされない場合も貸倒損失として認められるケースがあります。
具体的には以下の条件が該当します。
・継続的な取引停止後1年以上経過
債務者の資産状況や支払能力の悪化により取引を停止し、その後1年以上弁済がない場合。ただし、売掛債権に担保が設定されている場合は適用外。
・取立費用が売掛債権総額を超える場合
同一地域内の債務者に対する売掛債権が少額で、取立費用が債権額を超える場合に、督促しても弁済がない場合。
2.貸倒損失を計上する際の注意点
・取引の種類に留意
不動産取引のように一度きりの取引で発生した債権については、継続的な取引停止に基づく貸倒損失の規定は適用されません。
・損金算入のタイミング
一定期間取引停止後弁済がない場合の貸倒は、貸倒が発生した事業年度において、会計処理を行う必要があります。担保物の処分や保証債務の履行など、前提条件を満たしているか確認することが重要です。
・備忘価額の控除
貸倒損失として損金算入する際、売掛債権の額から1円などの備忘価額を控除する必要があります。
3.まとめ
法人の金銭債権に対する貸倒損失の計上は、債権回収不能の事実や状況に基づいて厳密に判断されます。
具体的な事例や条件を理解し、正しい時期に適切な処理を行うことで、税務リスクを軽減することが可能です。
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