免税事業者との取引におけるインボイス制度の注意点とは?経過処置などについて再度確認しよう。
2024/09/06
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
インボイス制度が導入されてから今年の10月で1年が経過し、事業者や会社経理の皆様にとっても実務が少しずつ落ち着いてきたかと思います。インボイス発行事業者間の取引においては、制度への理解が進み、混乱は少なくなってきました。しかし、注意すべきは免税事業者等との取引です。現在、経過処置として、令和8年9月末まで免税事業者からの課税仕入れについては80%、令和8年10月から令和11年9月末までは50%控除可能となっています。この経過処置を適用できる期間終了後、免税事業者との取引に関しては、消費是の負担が大きくなる可能性があります。今回は、免税事業者等からの仕入れに関する原則や経過措置について、再度解説します。
1.免税事業者等からの課税仕入れに関する原則
インボイス制度の下では、課税仕入れを行う場合、基本的には売手が発行するインボイス(適格請求書)を保存していなければ、買手は仕入税額控除を適用することができません。このため、免税事業者や適格請求書発行事業者の登録を受けていない課税事業者からの仕入れについては、原則として仕入税額控除が認められないことになります。
2.経過措置について
一方で、免税事業者等からの課税仕入れに対しても、一定の条件を満たせば、経過措置として仕入税額控除が認められます。この経過措置により、一定期間に限り、仕入税額相当額の一部について控除が可能となります。
①経過措置の内容
令和8年9月30日(2026年9月30日)まで:仕入税額相当額の80%を控除可能
令和11年9月30日(2029年9月30日)まで:仕入税額相当額の50%を控除可能
この経過措置を適用するためには、取引に関する「帳簿」および「請求書等」に特定の記載が必要です。
②経過措置の適用要件
経過措置の適用を受けるためには、次の2つの要件を満たすことが求められます。
ⅰ 請求書・領収書等の要件
免税事業者等からの仕入れであっても、以下の事項が記載された請求書や領収書を保存する必要があります。
・消費税込みの請求金額・領収金額(「区分記載請求書等保存方式」に基づく記載事項)
具体的には、以下の事項が記載されている必要があります。
・書類の作成者の氏名または名称
・課税資産の譲渡等を行った年月日
・課税資産の譲渡等に係る資産または役務の内容(軽減対象資産の譲渡等の場合、その旨も明記)
・税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
また、免税事業者等からの請求書等には、上記の「軽減対象資産の譲渡等である旨」および「税率ごとに合計した課税資産の譲渡等の税込価額」の記載がない場合、受領者(買手側)が自ら追記して保存することが認められています。
ⅱ帳簿の要件
帳簿には、次の事項を記載する必要があります。
・課税仕入れの相手方の氏名または名称
・課税仕入れを行った年月日
・課税仕入れに係る資産または役務の内容(経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨も含む)
・課税仕入れに係る支払対価の額
さらに、「80%控除対象」など、経過措置の適用を受ける旨の記載も求められます。これにより、経過措置を適用するための証拠として、帳簿と請求書等の双方が揃っている必要があります。
3.実務上の注意点
免税事業者等との取引においては、メールでのやり取りや簡易な請求書の利用が多いかもしれませんが、記載事項を満たさない請求書等の場合、経過措置の適用を受けられない可能性があります。特に、「本体価格のみ」の記載がある請求書や、請求書自体が発行されていない場合には、仕入税額控除が受けられないため、取引先との確認が必要です。
・仕入先との交渉を早めに行う
経過措置が終了すると、仕入税額控除が受けられなくなり、買手側の消費税納税額が増加する可能性があります。このため、控除割合が80%から50%に引き下げられる令和8年9月30日(2026年9月30日)までに、仕入先との交渉を行い、取引条件を再確認することが重要です。
仕入先との交渉の際には、下請法や独占禁止法、フリーランス法などの関連法令に違反しないように注意しましょう。
4.まとめ
インボイス制度の導入からまもなく1年が経過し、実務も徐々に落ち着いてきましたが、免税事業者等との取引に関しては、まだ注意が必要です。経過措置の適用を受けるための要件を再確認し、適切に対応することで、消費税の納税額の増加を防ぐことができます。仕入先との取引条件を見直し、適切な文書管理を行うことが、今後の経理業務のスムーズな運営につながります。
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