一時所得と雑所得の違い|判定の分かれ目と税額計算を税理士が解説
2024/05/31
一時所得と雑所得の違い|判定の分かれ目と税額計算を税理士が解説
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
懸賞で当たった賞金、生命保険の満期保険金、副業で受け取った原稿料。これらを確定申告するとき、「一時所得」と「雑所得」のどちらで申告していますか。実はこの2つ、税額の計算方法がまったく違います。一時所得には原則として最高50万円の特別控除があり、しかも所得の2分の1だけが課税の対象になります。区分を取り違えると、納めなくてよい税金を払ってしまったり、逆に申告漏れを指摘されたりすることになります。
今回は、一時所得と雑所得を分ける判定の基準を、所得税法の条文と国税庁の取扱いに沿って整理します。
1.違いを分ける条文の構造
所得税法第34条第1項は、一時所得を次のように定めています。利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得という8種類のいずれにも当たらない所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務または資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの、です。
つまり一時所得に当たるには、次の2段構えをすべてクリアする必要があります。
まず大前提として、上記8種類の所得のいずれにも当たらないこと。
そのうえで、次の3つを満たすことです。
①営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の、一時の所得であること。もうけを狙って繰り返し行っている活動から生じた収入は、ここで外れます。
②労務その他の役務の対価としての性質を有しないこと。働いたこと、役務を提供したことの見返りとして受け取るものは該当しません。給与や報酬はここで外れます。
③資産の譲渡の対価としての性質を有しないこと。モノを売った代金であれば、譲渡所得の領域になります。
一方の雑所得は、所得税法第35条第1項で「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得」と定められています。つまり雑所得は、他のどの所得にも入らないものを受け止める受け皿なのです。
ちなみに事業所得は、所得税法第27条第1項で、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得または譲渡所得に該当するものを除きます)とされています。同じ副業収入でも、事業と呼べる程度で行っていれば事業所得、そうでなければ雑所得という分かれ方をします。この点は後ほど詳しく触れます。
判定の順番は、まず8種類の所得に当たらないかを確認し、当たらなければ一時所得の3要件を見る。1つでも欠ければ雑所得になる、という流れです。この順序で考えると、迷いが少なくなります。
2.具体例で見る、どちらに区分されるか
まず、一時所得になるものの代表例です(所得税基本通達34-1、国税庁タックスアンサーNo.1490)。
①懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除きます)
②競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます)
③生命保険契約等に基づく一時金(業務に関して受けるものを除きます)、損害保険契約等に基づく満期返戻金等
④法人から贈与により取得する金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます)
⑤遺失物の拾得者や埋蔵物の発見者が受ける報労金等
⑥労働基準法第114条の規定により支払を受ける付加金
⑦人格のない社団等(法人ではない社団・財団で、代表者または管理人の定めがあるものをいいます)の解散により受けるいわゆる清算分配金、脱退により受ける持分の払戻金
なお、法令によって非課税とされている所得は、そもそも一時所得に含めません(所得税法第9条、タックスアンサーNo.2011)。受け取ったものが非課税に当たるかどうかは、個別にご確認ください。
ふるさと納税の返礼品も、一時所得の仲間です。国税庁の質疑応答事例では、寄附者が地方公共団体から受け取る返礼品にかかる経済的利益は、一時所得に該当するとされています。地方公共団体という法人からの贈与にあたるためです。返礼品の経済的利益をいくらと評価するかは個別の判断になりますが、ほかの一時所得と合算して判定する点にご注意ください。
次に、雑所得になるものの代表例です(所得税基本通達35-1・35-2、タックスアンサーNo.1500)。
①原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込みもしくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料または講演料等に係る所得(事業所得または山林所得と認められるものを除きます)
②公的年金等(所得税法第35条第3項)
③国税や地方税の還付金に付される還付加算金
④動産(船舶・航空機を除きます)の貸付けによる所得、金銭の貸付けによる所得
⑤工業所有権の使用料、採石権や鉱業権の貸付けによる所得
⑥営利を目的として継続的に行う資産の譲渡から生ずる所得
⑦非営業用貸金の利子
⑧シェアリングエコノミーに係る所得などの副業収入
こうして並べると、一時所得は「たまたま入ってきたお金」、雑所得は「他の所得区分に入らないその他のお金」という色合いの違いが見えてきます。
判定が分かれる境目を、2つ挙げます。
1つ目は馬券の払戻金です。原則は一時所得ですが、所得税基本通達34-1(2)の注書きが例外を定めています。馬券を自動的に購入するソフトウエアを使用して定めた独自の条件設定と計算式に基づくなど、偶然性の影響を減殺するために年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入し続け、購入行為の期間総体として回収率が100パーセントを超えるように購入してきたことが客観的に明らかな場合には、営利を目的とする継続的行為から生じた所得として雑所得に該当するとされています。それ以外の場合は一時所得です。競輪の車券の払戻金等も、これに準じて取り扱われます。「たくさん買っているかどうか」ではなく、仕組みとして利益が出るように買い続けていたことが客観的に明らかかどうかが分かれ目である点にご注意ください。
2つ目は生命保険の満期保険金です。ここで最初に確認すべきは、保険料を負担した人と保険金の受取人が同じかどうかです。タックスアンサーNo.1755によれば、所得税の対象となるのは保険料の負担者と保険金受取人とが同一人の場合であり、両者が異なる場合は所得税ではなく贈与税の対象となります。父が保険料を払い、子が満期保険金を受け取った、といったケースがこれにあたります。
保険料の負担者と受取人が同一人である場合には、一時金で受領すれば一時所得、年金形式で受け取れば雑所得になります。同じ保険契約でも、受け取り方で区分が変わるということです。
なお、一時払養老保険等で保険期間等が5年以下のもの、および保険期間等が5年超で5年以内に解約されたものは、源泉分離課税(受け取る時点で税金が差し引かれ、それだけで課税関係が完結する方式)の対象となります。合計20.315パーセント(所得税および復興特別所得税15.315パーセント、地方税5パーセント)の税率が適用され、この場合は50万円の特別控除も2分の1課税も適用されず、確定申告に含めることもできません。 懸賞金付預貯金等の懸賞金も同じ扱いです。
3.税額の計算は、ここまで違う
一時所得の金額の計算は、所得税法第34条第2項・第3項に定められています。
その年中の一時所得に係る総収入金額から、その収入を得るために支出した金額を差し引き、さらに特別控除額(最高50万円)を差し引いた金額が、一時所得の金額です。特別控除額は50万円ですが、差引後の残額が50万円に満たない場合はその残額が限度となります。
そして、この一時所得の金額の2分の1に相当する金額を総所得金額(各種の所得を合計した金額。ここから所得控除を差し引いた金額に税率をかけます)に算入する、と定めているのは所得税法第22条第2項第2号です。2分の1の根拠は第34条ではなく第22条にありますので、条文を確認される際はご注意ください。
雑所得の金額の計算は、所得税法第35条第2項です。公的年金等については収入金額から公的年金等控除額を差し引き、それ以外については総収入金額から必要経費を差し引いた金額となります。特別控除も、2分の1にする取扱いもありません。
具体的な数字で見てみましょう。収入金額が200万円、その収入を得るために直接支出した金額が30万円だったとします。
一時所得であれば、200万円から30万円と特別控除50万円を差し引いて120万円。その2分の1である60万円が総所得金額に算入されます。
雑所得であれば、200万円から必要経費30万円を差し引いた170万円がそのまま総所得金額に算入されます。
同じ収入金額でも、総所得金額に算入される金額に110万円もの差が生じるわけです。所得税は所得が大きいほど税率が上がる仕組みですから、この差はそのまま税額の差につながります。
ここで見落としやすいのが、特別控除50万円の使い方です。 条文は「その年中の一時所得に係る総収入金額」から計算すると定めています。つまり特別控除50万円は、その年に受け取ったすべての一時所得をまとめて計算したうえで、1年に1回だけ使えるものです。懸賞金・ふるさと納税の返礼品・保険の満期金がそれぞれ50万円以下だから全部ゼロ、とはなりません。合算して判定してください。
もう一つ、差し引ける支出の範囲にも注意が必要です。 所得税法第34条第2項のかっこ書きは、控除できる支出を「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」と限定しています。直接要した金額に限られるため、一時所得と判定される場合、外れ馬券の購入代金は差し引けません。差し引けるのは当たった馬券の購入代金だけです。保険であれば、その保険金に対応して払い込んだ保険料に限られます。なお、2で述べた例外にあたり雑所得と判定される場合は、一時所得ではなくなるため経費の考え方が変わります。該当しそうな方は個別にご相談ください。
4.確定申告が必要になるライン
ここからは給与所得者についてのお話です。 事業所得や不動産所得で確定申告をされている方には当てはまりません。また、公的年金等を受給されている方には、別の申告不要制度(要件が異なります)がありますのでご注意ください。
所得税法第121条第1項は、その年の給与等の金額が2,000万円以下である給与所得者について、確定申告書の提出を要しない場合を定めています。そのうちの第1号が、1か所から給与の支払いを受け、その全部について源泉徴収または年末調整による所得税の徴収をされた、またはされるべき場合において、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるとき、というものです(タックスアンサーNo.1900)。
間違えやすい点を3つ挙げます。
1つ目は、20万円は「収入」ではなく「所得金額」で判定するという点です。一時所得であれば、収入から支出と特別控除50万円を差し引いた一時所得の金額を、さらに2分の1にした金額で判定します。雑所得であれば、総収入金額から必要経費を差し引いた金額です。
2つ目は、20万円は個々の所得ごとではなく「合計額」で判定するという点です。条文も「給与所得及び退職所得以外の所得金額」の合計額としています。一時所得を2分の1にした後の金額が15万円、副業の雑所得が10万円であれば、合計25万円となり20万円を超えます。
3つ目は、この規定は「確定申告書を提出することを要しない」というものであり、20万円以下の所得が非課税になるわけではないという点です。国税庁のQ&Aは、給与所得以外の所得が20万円以下で確定申告を要しない場合であっても、たとえば還付を受けるための申告を行うのであれば、その20万円以下の所得も申告することが必要になる、としています。医療費控除やふるさと納税の還付などで確定申告書を提出するのであれば、20万円以下の所得も申告書に含めてください。
なお、給与収入が2,000万円を超える場合は、この申告不要の規定の対象外です。2か所以上から給与を受けている場合については、同項第2号に別の基準が定められています。国税庁No.1900は、年末調整をされなかった給与の収入金額と、給与所得・退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超えるかどうかで判定するとしています。ここは所得金額ではなく収入金額で見る点にご注意ください。また、所得税の確定申告が不要な場合であっても、住民税については別途の取扱いがありますので、お住まいの市区町村にご確認ください。
5.赤字が出ても、他の所得区分と相殺できません
所得税法第69条第1項は、損益通算の対象を限定しています。総所得金額等を計算する場合において、損失の金額を他の各種所得の金額から控除できるのは、不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の計算上生じた損失に限られます。
一時所得と雑所得は、この4つに含まれていません。タックスアンサーNo.2250も、一時所得の計算上損失が生じることはあるものの、その損失の金額を他の各種所得の金額から控除することはできない、としています。雑所得についても同様です。
ただし、ここでいう「他の各種所得」とは、給与所得や事業所得などの別の所得区分を指します。同じ雑所得の中では合算します。 所得税法第35条第2項は、雑所得の金額を「次の各号に掲げる金額の合計額」と定めており、公的年金等以外の雑所得は総収入金額から必要経費を差し引いた金額として一括りに計算されます。副業が複数あるなら、それらをまとめて計算するということです。相殺できないのは、区分をまたぐ場合だと理解してください。
つまり、副業全体で経費が収入を上回った年があっても、その所得が雑所得である限り、赤字は給与所得などと相殺されずにそのまま終わります。次に説明する事業所得と雑所得の区分が実務上重要になるのは、この違いがあるためです。
6.副業は事業所得か、雑所得か
区分の判定基準は、所得税基本通達35-2の注書きに示されています。読む順番が大切なので、要点を2段階に分けてご紹介します。
第1段階: 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
第2段階: その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除きます)には、原則として業務に係る雑所得に該当する。
では、帳簿書類を保存していれば必ず事業所得になるのでしょうか。国税庁の通達改正の解説は、まず原則として「その所得に係る取引を帳簿書類に記録し、かつ、記録した帳簿書類を保存している場合には、その所得を得る活動について、一般的に、営利性、継続性、企画遂行性を有し、社会通念での判定において、事業所得に区分される場合が多いと考えられます」としています。帳簿をつけて保存していることは、事業所得と扱われるうえで大きな意味を持ちます。
ただし例外もあります。同じ解説では、帳簿書類の保存がある場合でも、①その所得の収入金額が、例年、300万円以下で主たる収入(本業の給与収入など)に対する割合が10パーセント未満であるなど収入金額が僅少と認められる場合や、②その所得が例年赤字で、かつ、赤字を解消するための取組を実施していないなど営利性が認められない場合には、事業と称する程度で行っているかどうかを個別に判断するとされています。①②はいずれも「例年」の状況で見る基準であり、単年度の数字だけで決まるものではありません。
また、業務に係る雑所得についても、収入の規模に応じた義務が定められています。いずれも令和4年分以後の所得税について適用されるものです。なお「前々年分」とは、令和8年分の申告であれば令和6年分のことで、その年ではなく2年前の収入金額で判定します。
①前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合、現金預金取引等関係書類(請求書や領収書などのうち、現金の収受・払出しや預貯金の預入・引出しに際して作成されたもの)を保存しなければなりません(所得税法第232条第2項)。
②前々年分の収入金額が1,000万円を超える場合には、確定申告書に、その年の総収入金額および必要経費の内容を記載した書類(収支内訳書など)を添付しなければなりません(所得税法第120条第6項)。
③前々年分の収入金額が300万円以下であれば、その年に収入した金額と支出した費用の額で計算する、いわゆる現金主義の特例を選ぶことができます(所得税法第67条第2項、同法施行令第196条の2)。ただし、確定申告書にその旨を記載する必要があります。これは業務に係る雑所得についての特例で、不動産所得・事業所得の現金主義(同条第1項)は青色申告であることなど要件が異なります。
まとめ
一時所得と雑所得は、次の順番で判定できます。
①まず、利子・配当・不動産・事業・給与・退職・山林・譲渡の8種類に当たらないかを確認する
②次に、営利を目的とする継続的行為以外の一時の所得であり、労務その他の役務の対価でも資産の譲渡の対価でもない、という3つをすべて満たすかを確認する
③1つでも欠ければ、雑所得になる
区分が決まれば、税額の計算方法も決まります。一時所得には最高50万円の特別控除と2分の1課税がありますが、特別控除は1年に1回、その年の一時所得をまとめて計算する点、差し引ける支出は「直接要した金額」に限られる点にご注意ください。また、一時所得も雑所得も、赤字を別の所得区分と相殺することはできません。
そして副業の収入を事業所得として申告したいのであれば、判定の本体は「社会通念上事業と称する程度で行っているか」です。帳簿書類の作成と保存は、その出発点になります。
なお、本記事は2026年8月7日時点で公表されている法令および国税庁の資料に基づいています(参照した国税庁タックスアンサーはいずれも令和7年4月1日現在法令等)。税制は毎年改正されますので、実際の申告にあたっては最新の取扱いをご確認ください。
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