小原崇史公認会計士事務所

【税理士解説】消費税の届出書はいつ出す?新設法人・基準期間の判定法

お問い合わせ LINEでお問い合わせ 松本事務所

【税理士解説】消費税の届出書はいつ出す?新設法人・基準期間の判定法

【税理士解説】消費税の届出書はいつ出す?新設法人・基準期間の判定法

2025/09/11

【税理士解説】消費税の届出書はいつ出す?新設法人・基準期間の判定と提出漏れの防ぎ方

 

渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
「消費税の届出書は、法人設立届出書さえ出しておけば大丈夫」と思っていませんか。実はこの認識、要件を満たしていない可能性があります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたのに届出書を出し忘れていた、というご相談も少なくありません。

 

1.消費税課税事業者届出書とは?「基準期間用」と「新設法人用」の2種類!

消費税課税事業者届出書とは、免税事業者(消費税の納税義務が免除される事業者)が課税事業者(消費税を納める義務がある事業者)に該当することとなったときに、税務署へ提出する届出書です。
消費税の納税義務は、原則として基準期間における課税売上高が1,000万円以下である事業者については免除されます(消費税法第9条)。

ここでいう基準期間とは、個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度の前々事業年度をいいます(同法第2条第1項第14号)。
この基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたときに提出するのが「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」です。また、これとは別に、事業年度開始時点の資本金または出資金が1,000万円以上である新設法人が提出するのが「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」です。

両者は提出のきっかけとなる要件がまったく異なるため、混同しないことが大切です。
なお、国税庁が公表している消費税の届出書一覧には、このほかにも

①課税事業者選択届出書(あえて課税事業者になる場合)、

②簡易課税制度選択届出書(売上高から納付税額を計算する簡易課税を選ぶ場合)、

③消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書(課税売上高が1,000万円以下に戻った場合)など、目的の異なる届出書が数多く用意されています。

これらは提出するきっかけも書式もそれぞれ異なるため、まずは自社がどの届出書に該当するのかを正しく見極めることが出発点になります。今回では、特に提出漏れが起きやすい「基準期間用・特定期間用」と「新設法人用」の2つに絞って、要件と実務上の注意点を詳しく解説します。

①の課税事業者選択届出書との違いは5章で解説します。
これらの届出書は、法人税の確定申告とは別のタイミングで判定が必要になる点も見落とされがちです。法人税の申告準備をしていると、つい消費税のことは後回しになりがちですが、基準期間・特定期間・資本金の額はいずれも決算数値が固まった時点で確認できる情報です。決算業務のチェックリストに消費税の課税事業者判定を組み込んでおくことで、届出漏れと申告漏れの両方を防ぐことができます。

 

2.基準期間の課税売上高が1,000万円を超えたときの届出(消費税課税事業者届出書)

基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたことにより課税事業者となる場合には、「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を提出しなければなりません(消費税法第57条第1項第1号、同法施行規則第26条第1項第1号)。
提出時期は「事由が生じた場合、速やかに」とされており、基準期間用については具体的な期限日が定められているわけではありません。
たとえば3月決算の法人で、前々事業年度(基準期間)の課税売上高が1,200万円であった場合、当期は基準期間の課税売上高が1,000万円を超えているため課税事業者に該当し、この届出書の提出が必要になります。逆に、前々事業年度の課税売上高が900万円であれば、原則として当期は免税事業者のままです。
基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合には、その年またはその事業年度から課税事業者となります(消費税法第9条の2)。特定期間とは、個人事業者はその年の前年1月1日から6月30日まで、法人は原則として前事業年度開始の日以後6か月の期間をいいます。この場合に提出するのが「消費税課税事業者届出書(特定期間用)」です。なお、特定期間の判定は、課税売上高に代えて給与等支払額の合計額で行うこともできます(その課税期間の初日において国外事業者である場合を除きます)。たとえば、前事業年度の課税売上高が特定期間中に1,100万円だったとしても、同じ期間に支払った給与等の合計額が900万円であれば、給与等支払額で判定して課税事業者に該当しない、という選択も可能です。


3.資本金1,000万円以上で法人を新設したときの届出(消費税の新設法人に該当する旨の届出書)

 

基準期間がない事業年度の開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人(新設法人)は、その基準期間がない事業年度に含まれる各課税期間について、基準期間の課税売上高による納税義務の免除(消費税法第9条第1項本文)が適用されません(同法第12条の2第1項)。

つまり、設立1期目・2期目であっても、資本金または出資金が1,000万円以上であれば、原則として設立当初から消費税の課税事業者になるということです。
たとえば、4月1日に資本金1,500万円で法人を設立し、3月決算とした場合、1期目・2期目はいずれも前々事業年度が存在しないため基準期間がありません。

本来であれば基準期間がない事業年度は免税事業者になりそうなところですが、事業年度開始の日(この場合は設立日である4月1日)における資本金が1,000万円以上であるため、新設法人の特例により1期目から課税事業者に該当します。一方、資本金900万円で設立した場合は、この特例の対象にはならず、原則どおり1期目・2期目は免税事業者となります(特定期間の判定など他の要件に該当しない限り。特定期間による判定については8章で解説します)。
この新設法人に該当することとなった場合に提出するのが「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」です(消費税法第57条第2項、同法施行規則第26条第5項)。提出時期は「事由が生じた場合、速やかに」とされています。
なお、この新設法人の特例は資本金または出資の金額を基準とする仕組みであるため、資本金という概念を持たない個人事業者には適用されません。

個人事業主として開業した初年度・2年目は、基準期間(前々年)が存在しないため、原則として基準期間による課税事業者判定の対象外となり、特定期間の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超えない限り、免税事業者のままとなります。法人化(法人成り)を検討する際は、この違いも踏まえて消費税への影響をあわせて確認しておくとよいでしょう。
なお、その事業年度の基準期間がある外国法人が、当該基準期間の末日の翌日以後に国内で課税資産の譲渡等に係る事業を開始した場合には、その事業年度は基準期間がないものとみなされます(同法第12条の2第3項)。この場合、事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上であれば、外国法人であっても新設法人に該当する旨の届出書の提出が必要になる点に注意が必要です。
ここでいう「資本金の額又は出資の金額」は、貸借対照表上の資本金の額(合同会社であれば出資の金額)で判定します。資本準備金やその他資本剰余金は含まれません。この判定基準を踏まえて資本金の額を意図的に調整する資本政策を検討する場合、消費税だけでなく、法人住民税の均等割など資本金の額を基準とする他の税目にも影響が及ぶ可能性があります。資本政策は消費税の判定だけで決めるべきものではありませんので、設立時・増資時にはあらかじめ税理士にご相談することをおすすめします。

 

4.法人設立届出書に記載していれば、この届出書は別途提出不要になるケース

「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」には、実務上便利な省略ルールがあります。法人を設立した際に提出する法人設立届出書に、消費税の新設法人に該当する旨および所定の記載事項をあわせて記載して提出している場合は、この届出書を改めて提出する必要はありません。
会社設立時に税理士へ依頼して法人設立届出書を作成する場合は、この記載欄もあわせて埋めるのが一般的です。もっとも、自社のみで法人設立届出書を作成し、この記載を漏らしたまま提出してしまうと、新設法人に該当する旨の届出書をあらためて提出しなければならなくなります。
特に、設立時点では資本金900万円で新設法人に該当しないと判断して法人設立届出書にその旨を記載しなかったものの、設立直後の増資によって事業年度開始の日における資本金が1,000万円以上になった、というケースでは注意が必要です。このような場合は法人設立届出書の記載だけでは足りず、あらためて「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」を提出する必要があります。資本金または出資金が1,000万円前後の法人を設立する際は、設立時点の記載だけでなく、その後の増資予定も踏まえて確認することをおすすめします。
また、法人設立届出書と消費税の新設法人に関する届出は、あくまで「あわせて記載していれば省略できる」という関係にすぎず、法人設立届出書を提出したこと自体が消費税の課税事業者判定に影響するわけではありません。判定はあくまで事業年度開始の日における資本金の額によって決まりますので、法人設立届出書の提出有無や記載内容にかかわらず、資本金が1,000万円以上であれば新設法人に該当する点は変わりません。届出はあくまで事実を税務署に知らせる手続きであり、届出の有無によって納税義務の発生・不発生が左右されるわけではないことを、あらためて押さえておきましょう。

 

5.「消費税課税事業者選択届出書」との違い(あえて課税事業者になる場合は別の書類)

消費税課税事業者選択届出書は、免税事業者が自ら課税事業者になることを選択する際に提出する届出書です(消費税法第9条第4項、同法施行規則第11条第1項)。

基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかにかかわらず提出できる点が、これまで解説してきた「消費税課税事業者届出書」との大きな違いです。
提出時期にも違いがあります。課税事業者選択届出書は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出しなければなりません(事業を開始した日の属する課税期間である場合は、その課税期間中の提出で足ります)。

基準期間用・新設法人用の届出書が「事由が生じた場合、速やかに」でよいのに対し、選択届出書は事前提出が原則である点は、実務上の大きな注意点です。提出期限を過ぎてしまうと、その課税期間については課税事業者を選択できず、翌課税期間からの適用になってしまいます。
課税事業者選択届出書は、輸出取引が多く消費税の還付を受けたい場合や、設備投資が先行して仕入税額控除を活用したい場合などに利用されます。

免税事業者のままでいるか、あえて課税事業者を選択するかは、資金繰りや取引先との関係にも影響する経営判断になりますので、個別の状況に応じて税理士に相談することをおすすめします。
なお、免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)としての登録を受ける場合は、この課税事業者選択届出書を別途提出しなくても、登録日(登録希望日)から課税事業者になれる経過措置が設けられています。この経過措置は期間限定であり、対象期間外の登録には適用されませんので、ご自身の登録時期が対象かどうかを確認しておく必要があります。インボイス登録に伴う消費税の負担軽減策(2割特例)についても期間限定の措置ですので、別記事の解説とあわせて対象期間をご確認ください。


6.届出書を提出しないとどうなる?インボイス発行事業者は提出が必要?

消費税課税事業者届出書を提出し忘れた場合でも、基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円を超えていれば、消費税を納める義務そのものは法律上発生します。

届出書の提出は、課税事業者に該当する事実を税務署に把握してもらうための手続きであり、届出書を出していないことを理由に納税義務そのものが免除されるわけではありません。
届出が遅れると、税務署からの申告書類の案内が届かないまま消費税の申告期限を迎えてしまい、結果として消費税の申告そのものが漏れてしまうリスクが高まります。

毎期の決算時に「前々事業年度の課税売上高は1,000万円を超えていないか」を確認するルーティンを持っておくことが、届出漏れ・申告漏れの防止につながります。
一方で、次のいずれかに該当する事業者は、基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円を超えても、この届出書をあらためて提出する必要はありません。

①すでにこの届出書(基準期間用)または特定期間用の届出書を提出しており、その後引き続き課税事業者である事業者、

②消費税課税事業者選択届出書を提出している事業者(提出日の属する課税期間の翌課税期間以後)、

③適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録を受けている事業者(登録日の属する課税期間の翌課税期間以後)。

③については、適格請求書発行事業者が消費税の納税義務の免除の対象から除かれているためです(消費税法第9条第1項かっこ書)。

すでに課税事業者として届出済み・選択済み・インボイス登録済みの事業者が、決算のたびにこの届出書を重ねて提出する必要はない、という実務上のポイントになります。

逆にいえば、②③に該当する事業者は、基準期間や特定期間の課税売上高にかかわらずすでに課税事業者であるという点は、次章のチェックリストでも重要になります。

 

7.提出方法・提出先・添付書類(相続・合併・分割等があった場合を含む)

いずれの届出書も、提出先は納税地を所轄する税務署長です。

提出方法は、書面を持参または送付する方法のほか、e-Taxソフトを利用したオンライン提出にも対応しています。
相続、合併または分割等があったことにより課税事業者となる場合には、「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」の提出にあわせて「相続・合併・分割等があったことにより課税事業者となる場合の付表」の添付が必要です。

相続により事業を承継した場合や、合併・分割によって課税売上高の合算判定が必要になる場合は、通常の基準期間の判定とは異なる特例が設けられているため(消費税法第10条、第11条、第12条)、該当する可能性がある場合は早めに税理士へご相談ください。
実務上は、決算のたびに

①基準期間(前々事業年度)の課税売上高、

②特定期間(前事業年度開始から6か月間)の課税売上高または給与等支払額、

③事業年度開始時点の資本金の額に加えて、

④すでに消費税課税事業者選択届出書を提出していないか、

⑤適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)として登録を受けていないか、の合計5点をチェックリスト化しておくと、届出漏れだけでなく申告漏れも防ぎやすくなります。

④・⑤のいずれかに該当する事業者は、①〜③の結果にかかわらずすでに課税事業者であるため、①〜③だけを確認して免税事業者と判断してしまうと、消費税の申告漏れにつながるおそれがあります。特に、決算を税理士に依頼せず自社で行っている場合は、①〜⑤のすべてに該当しないことを確認したうえで、初めて免税事業者として申告不要と判断する、という手順を踏むことをおすすめします。
相続があった場合は、被相続人が個人事業者として消費税の課税事業者であったかどうか、また被相続人の事業を承継した相続人自身の基準期間における課税売上高がどの程度であったかによって、判定方法が変わります。

相続開始後の消費税の取扱いは、準確定申告や遺産分割の手続きと時期が重なりやすく、通常の基準期間による判定よりも見落としが生じやすい場面です。相続により事業を承継する予定がある場合は、早めに税理士へ相談し、届出の要否とスケジュールをあわせて確認することをおすすめします。


8.特定期間による判定と外国法人の特則、判定を間違えやすいケース

ここまで解説してきたとおり、消費税の課税事業者に該当するかどうかの判定は、基準期間だけでなく特定期間によっても行われます。設立2期目までの法人は基準期間がないため一見免税事業者のように思われがちですが、前事業年度開始から6か月間の課税売上高(または給与等支払額)が1,000万円を超えていれば、特定期間の判定により2期目から課税事業者になることがあります。新設法人の特例(資本金1,000万円以上)に該当しないことだけを確認して安心してしまうと、特定期間の判定を見落とすおそれがあるため注意が必要です。
また、資本金または出資金が1,000万円未満で設立した法人であっても、事業年度の途中で増資を行い、翌事業年度の開始日における資本金が1,000万円以上になれば、その事業年度から新設法人に該当することになります。逆に、設立時の資本金が1,000万円以上であっても、事業年度開始後に減資をした場合、その事業年度開始の日における資本金の額で判定するため、当該事業年度についてはすでに開始している以上、新設法人の判定に影響しません。増資・減資のタイミングと事業年度開始日の前後関係を取り違えると判定を誤りやすいため、増資・減資を検討する際は、消費税への影響もあわせて確認することをおすすめします。
外国法人についても、基準期間がある外国法人が、その基準期間の末日の翌日以後に国内で事業を開始した場合は、基準期間がないものとみなされ、事業年度開始の日における資本金または出資金が1,000万円以上であれば新設法人に該当します。国内進出のタイミングによって判定が変わる点は、見落とされやすいポイントです。
このように、消費税の課税事業者に該当するかどうかは「基準期間」「特定期間」「資本金の額」という3つの異なる切り口から判定する必要があり、いずれか1つだけを確認して安心してしまうと判定を誤るおそれがあります。設立時・増資時・決算時のそれぞれのタイミングで、この3つを漏れなく確認する体制を整えておくことが、届出漏れと想定外の消費税負担を防ぐ最も確実な方法です。

 

まとめ

消費税課税事業者届出書には、基準期間や特定期間の課税売上高が1,000万円を超えたときに提出する「基準期間用・特定期間用」と、資本金または出資金1,000万円以上で法人を設立したときに提出する「新設法人用」の2種類があり、要件も提出のきっかけもまったく異なります。まずは自社がどちらに該当するのか、決算のたびに基準期間・特定期間の課税売上高と、設立時の資本金の額を確認することから始めましょう。
法人を新たに設立する際は、法人設立届出書に消費税の新設法人に該当する旨をあわせて記載することで、届出書の提出漏れを防ぐことができます。すでに事業を運営している場合は、毎期の決算時に基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていないかを確認し、超えていれば速やかに届出書を提出することをおすすめします。
「うちの会社は新設法人に該当するのか分からない」「増資をしたら消費税の扱いはどう変わるのか」「基準期間と特定期間、どちらで判定すればよいのか」といったご相談は、渋谷区恵比寿の税理士法人小原会計までお気軽にお問い合わせください!

----------------------------------------------------------------------
税理士法人小原会計/小原崇史公認会計士事務所
住所 : 東京都渋谷区恵比寿1-5-1 ボックスハツミ 502号室
電話番号 : 03-6277-1611


渋谷で充実した開業支援を提供

渋谷で充実した税務顧問サービスを提供

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。