小原崇史公認会計士事務所

フリーランスへの報酬、税金どうする?源泉徴収の基礎知識

お問い合わせ LINEでお問い合わせ 松本事務所

【税理士解説】報酬の源泉徴収|100万円が分かれ目の計算と納期の特例

【税理士解説】報酬の源泉徴収|100万円が分かれ目の計算と納期の特例

2025/05/20

【税理士解説】報酬の源泉徴収|100万円が分かれ目の計算と納期の特例


渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
外部のデザイナーやライター、顧問弁護士などに報酬を支払うとき、請求書どおりの金額をそのまま振り込んでいませんか。

実はこの支払い、源泉徴収が必要な場合があり、徴収を怠ると後から追徴のリスクがあります。相手の職業によって計算方法や納付のルールも異なるため、正しく理解しておくことが大切です。

 

1.講演料・原稿料・弁護士報酬…源泉徴収が必要な「報酬・料金」の範囲とは

個人に一定の業務に関する報酬・料金を支払う場合、支払う側が所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、国に納める義務があります。

対象となる報酬・料金は所得税法で具体的に列挙されており、主なものは次のとおりです。

①原稿・さし絵・作曲・デザインの報酬、放送謝金、著作権(著作隣接権を含む)や工業所有権の使用料、講演料

②弁護士(外国法事務弁護士を含む)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士等の業務に関する報酬

③社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬

④職業野球選手、職業拳闘家、競馬の騎手、モデル、外交員、集金人、電力量計の検針人等の業務に関する報酬

⑤映画・演劇その他の芸能やラジオ・テレビ放送に係る出演・演出・企画の報酬

⑥キャバレー、ナイトクラブ、バー等でホステス等の業務を行う人に支払う報酬

⑦役務の提供を約することにより一時に受け取る契約金

⑧広告宣伝のための賞金、馬主が受ける競馬の賞金

 

謝礼、取材費、車代などの名目で支払っていても、実態が上記の報酬・料金と同じであれば源泉徴収の対象になります。また、報酬・料金の額に消費税等が含まれている場合は、原則としてその消費税等を含めた金額が源泉徴収の対象です。ただし、請求書等で報酬・料金の額と消費税等の額が明確に区分されていれば、税抜きの金額のみを対象としても差し支えありません。

インボイス制度が始まった後も、この取扱いに変更はありません。
なお、なんとなく「フリーランスへの外注費だから」という理由だけで一律に源泉徴収するかどうかを判断するのは誤りです。

上記の一覧に該当する業務内容かどうかを、まず個別に確認する必要があります。

 

2.個人事業主でも源泉徴収が不要になるケースとは(支払う側の要件)

源泉徴収が必要かどうかは、支払いを受ける側の職業だけでなく、実は「支払う側」の状況によっても変わります。
報酬・料金の支払者が個人であり、かつその個人が給与等の支払者でないとき、または給与等の支払者であっても常時2人以下の家事使用人のみに給与を支払っているときは、源泉徴収をする必要はありません。

たとえば、従業員を雇っていない個人事業主やフリーランスが、外部のライターやデザイナーに業務を依頼して報酬を支払う場合、この要件に当てはまれば源泉徴収は不要になります。
ただし、この取扱いにはホステス等の業務に関する報酬・料金は含まれません。ホステス等への報酬は、支払者が個人であっても源泉徴収が必要です。
また注意したいのは、青色事業専従者給与を含めて従業員に給与を1人でも支払っている個人事業主です。この場合、たとえその給与について納付すべき税額がゼロであっても、源泉徴収の対象となる報酬・料金を支払う際には所得税および復興特別所得税を源泉徴収しなければなりません。「うちは家族への給与だけだから関係ない」と思い込まず、支払う側の状況を毎回確認する必要があります。
なお、法人が報酬・料金を支払う場合は、この個人向けの免除規定はなく、原則として源泉徴収義務者に該当します(内国法人が源泉徴収義務を負うのは、馬主として競馬の賞金を受け取る場合に限られます)。
実務では、外部への支払いが発生するたびに、①支払う側が個人か法人か、②個人である場合は給与等の支払者に該当するか、③該当する場合でも家事使用人2人以下のみへの給与にとどまるか、の順に確認すると判断しやすくなります。開業したばかりで従業員のいない個人事業主が外部のライターに原稿を依頼するようなケースでは源泉徴収が不要になる一方、同じ個人事業主でもアルバイトを1人でも雇用していれば、その時点で源泉徴収義務者に該当する点に注意が必要です。

 

3.源泉徴収税額の計算方法|100万円がボーダーライン、資格者ごとに式が違う

源泉徴収すべき税額の計算式は、支払金額と相手の資格によって異なります。まず、原稿料・講演料や、弁護士・税理士・公認会計士等への報酬、契約金など多くのケースで使われる基本の計算式は次のとおりです。
支払金額が100万円以下の場合:支払金額×10.21% 支払金額が100万円を超える場合:(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円
たとえば、150万円の原稿料を支払う場合は、(150万円-100万円)×20.42%+102,100円=204,200円が源泉徴収税額です。

求めた税額に1円未満の端数が生じたときは切り捨てます。
一方、司法書士、土地家屋調査士、海事代理士に支払う報酬・料金は計算式が異なり、同一人に対して1回に支払う金額から10,000円を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて計算します(診療報酬、外交員等への報酬、ホステス等への報酬、広告宣伝の賞金等も、それぞれ定められた金額を控除したうえで10.21%を乗じる方式です)。

たとえば、司法書士に1件5万円の報酬を支払う場合は、(5万円-1万円)×10.21%=4,084円となります。
100万円以下の支払いであれば計算はシンプルです。たとえば、講演料として30万円を支払う場合は、30万円×10.21%=30,630円が源泉徴収税額になります。
「100万円から一定額を控除したうえで10.21%を乗じる」方式が適用されるのは、司法書士・土地家屋調査士・海事代理士への報酬のほか、社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬、職業拳闘家・外交員・集金人・電力量計の検針人への報酬、ホステス等への報酬、広告宣伝のための賞金です。

これに対し、原稿料・講演料や弁護士・公認会計士・税理士等の多くの資格者への報酬、契約金は「100万円」を境目に10.21%と20.42%を使い分ける方式になります。同じ「士業への報酬」でも計算式が異なるため、税理士や弁護士への報酬だからといって司法書士への報酬と同じ感覚で計算すると、税額を誤ってしまう可能性があります。なお、報酬・料金の額に消費税等が含まれる場合の扱いは1.と同様で、請求書等で区分されていれば税抜金額を基準にできます。


4.納付期限と「納期の特例」|対象になる報酬・ならない報酬の違い

源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として支払った月の翌月10日までに、e-Taxを利用するか、所得税徴収高計算書(納付書)を添えて金融機関や税務署の窓口で納付しなければなりません。
給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、税務署長の承認を受けることで「納期の特例」の適用を受けられます。

これは半年分の源泉所得税をまとめて納付できる制度で、1月から6月に源泉徴収した分は7月10日まで、7月から12月に源泉徴収した分は翌年1月20日までが納付期限になります。
ここで見落としやすいのが、納期の特例の対象範囲です。特例の対象になるのは、給与や退職手当等に加えて、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・公認会計士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士等、所得税法204条1項2号に定める資格者に支払う報酬・料金に限られます。

原稿料や講演料は、たとえ納期の特例の承認を受けていても、この特例の対象にはならず、常に支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。「顧問料は半年後でよいから、原稿料もまとめて納付すればよい」と誤解して延滞税や不納付加算税の対象になるケースもあるため、報酬の種類ごとに納付ルールを分けて管理することが重要です。
納期の特例の適用を受けるには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を、給与等の支払事務を行う事務所等の所在地を所轄する税務署長に提出します。税務署長から却下の通知がなければ、原則として提出した月の翌月末日に承認があったものとみなされ、申請書を提出した月の翌月に源泉徴収する所得税から特例の対象になります。逆に、給与の支給人員が常時10人以上になるなど要件に該当しなくなった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」の提出が必要です。

 

5.支払調書の提出義務と50,000円ライン

一定額を超える報酬・料金を支払った場合、支払った側には税務署へ「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出する義務があります。
弁護士や税理士等への報酬、作家や画家への原稿料・画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円を超える場合に提出が必要です。これに対して、外交員や集金人、ホステス等への報酬・料金は合計額50万円超、馬主が受け取る競馬の賞金は1回の支払額75万円超が提出範囲の基準になります。
提出範囲の判定は、原則として消費税等の額を含めた金額で行いますが、請求書等で消費税等の額が明確に区分されている場合は、その額を含めずに判定しても差し支えありません。

提出期限は、支払が確定した年の翌年1月31日までで、e-Taxを利用するか書面で「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」とともに提出します。また、税務署に提出する支払調書には、報酬・料金等の支払を受ける方のマイナンバーまたは法人番号の記載が必要です。ただし、受給者に交付する写しにはマイナンバーを記載できない点にも注意してください。
なお、法人(人格のない社団等を含みます)に支払う報酬・料金で源泉徴収の対象とならないものや、支払金額が源泉徴収の対象とならない少額のものであっても、上記の金額基準に該当する場合には支払調書の提出が必要です。また、非居住者に対して国内で行う人的役務の提供の対価として報酬等を支払った場合は、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」ではなく、「非居住者に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書」を提出する必要があるため、あわせて確認しておきましょう。

 

まとめ

報酬・料金の源泉徴収は、①相手の業務内容が源泉徴収の対象に当てはまるか、②支払金額と相手の資格に応じた正しい税額を計算できているか、③納期の特例の対象になる報酬かどうか、の3点を支払いのたびに確認する仕組みを社内に作っておくことが実務でのポイントです。特に原稿料や講演料は納期の特例の対象外である点、司法書士等への報酬は控除額が異なる点は見落としがちなので、支払先ごとにチェックリスト化しておくことをおすすめします。
なお、本記事は2026年8月31日時点で公表されている法令および国税庁の資料に基づいています(参照した国税庁タックスアンサーの多くは令和7年4月1日現在法令等、支払調書に関する情報は令和8年4月1日現在法令等)。税制は毎年改正されますので、実際の取扱いにあたっては最新の情報をご確認ください。
「この支払いが源泉徴収の対象になるか分からない」「税額の計算方法が合っているか不安」「納期の特例を申請すべきか知りたい」といったご相談は、渋谷区恵比寿の税理士法人小原会計までお気軽にお問い合わせください!

----------------------------------------------------------------------
税理士法人小原会計/小原崇史公認会計士事務所
住所 : 東京都渋谷区恵比寿1-5-1 ボックスハツミ 502号室
電話番号 : 03-6277-1611


渋谷で充実した税務顧問サービスを提供

----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。