法人税が増える?令和8年度から始まる「防衛特別法人税」のポイント
2025/04/30
【税理士解説】防衛特別法人税、払うのはどんな会社?税額ゼロでも申告は必要
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
「防衛特別法人税は大企業の話で、うちのような中小企業には関係ない」——そう考えて何も準備をしていないとすれば、注意が必要です。
この税金は、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人が納税義務者とされており、資本金の大小や業種による線引きはありません。
しかも、納める税額がゼロであっても申告書の提出は必要です。制度は「これから始まる」ものではなく、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、すでにスタートしています。
この記事では、対象になる法人、税額の計算方法、申告と納付の期限、そして中間申告がいつから始まるのかを、条文と国税庁の資料に沿って整理します。
1.防衛特別法人税は「令和8年4月1日以後に開始する事業年度」から始まっています
防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用が始まっている、法人税に上乗せして課される国税です。
根拠となる法律は「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」(令和5年法律第69号。以下「防衛財源確保法」といいます)で、令和7年3月31日に公布された令和7年法律第13号(所得税法等の一部を改正する法律)により、同法の第4章として防衛特別法人税が設けられました。
ここで実務上いちばん間違えやすいのが、適用開始の数え方です。防衛財源確保法では、この税金の対象となる事業年度を「課税事業年度」と呼び、令和8年4月1日以後に「開始する」各事業年度と定めています(防衛財源確保法第11条)。「終了する」事業年度ではありません。なお、通算子法人(グループ通算制度を適用しているグループの子会社)については、その通算親法人の事業年度を基準に判定します(同条)。
決算期別に、最初の課税事業年度と申告期限を並べると次のとおりです。
① 3月決算法人……令和8年4月1日から令和9年3月31日までの事業年度が最初の課税事業年度となり、申告期限は令和9年5月31日
② 9月決算法人……令和8年10月1日から令和9年9月30日までの事業年度が最初となり、申告期限は令和9年11月30日
③ 12月決算法人……令和9年1月1日から令和9年12月31日までの事業年度が最初となり、申告期限は令和10年2月29日(令和10年はうるう年です)
つまり12月決算の法人は、令和8年1月1日に始まった今期はまだ対象外で、実際に申告が必要になるのは1年以上先ということになります。同じ「令和8年から」という言葉でも、上の①と③では初回の申告時期が9か月ほどずれます。
なお、この税金には終了年限が定められていません。防衛財源確保法第9条は「当分の間」課税すると定めており、期間限定の措置ではない点も押さえておきたいところです。
2.納める義務があるのは「法人税を課される法人」!
防衛特別法人税の納税義務者は、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人です(防衛財源確保法第8条)。
条文は「各事業年度の所得に対する法人税を課される法人」としており、資本金の大小や業種による線引きはありません。中小企業だから対象外、スタートアップだから対象外、という取扱いはないということです。国税庁の手続案内ページ「C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」でも、手続対象者として同法第8条に規定される納税義務者と明記されています。
ただし、各事業年度の所得に対する法人税の納税義務がない法人などは、この税金の対象になりません。国税庁は、たとえば次のような法人については防衛特別法人税確定申告書を提出する必要がないとしています。
① 公益法人等(法人税法別表第二に掲げる法人をいいます。一般社団法人・一般財団法人については、非営利型法人に該当するものが公益法人等として扱われ、それ以外は普通法人としてすべての所得が課税されます)および人格のない社団等(法人ではない社団や財団で、代表者または管理人の定めがあるものです)で、収益事業(販売業・製造業など政令で定める事業を、継続して事業場を設けて行うものです)を行っていないもの
② 国内源泉所得を有しない外国法人
③ 平成22年9月30日以前に解散した内国法人である普通法人または協同組合等で、清算所得に対する法人税を課されるもの
もう一点、区別しておきたいことがあります。「制度の対象になること」と「実際に税額が発生すること」は別だという点です。
後述するとおり、防衛特別法人税は基準法人税額(一定の税額控除を適用する前の法人税額のことです。詳しくは本記事の4.で説明します)から年500万円を差し引いた残りに課税されます。したがって、次のような法人では計算の結果として税額はゼロになります。
① 税務上の所得が生じず、法人税額がゼロとなる法人(会計上の赤字と税務上の欠損は一致しませんので、申告書の所得金額で判断します)
② 所得が生じていても、基準法人税額が基礎控除額(事業年度が12か月の法人で年500万円)以下の法人
事業年度が12か月の法人であれば、基準法人税額が500万円を超えるかどうかが分岐点です(事業年度が12か月に満たない場合やグループ通算制度を適用している場合は基礎控除額が変わります。本記事の5.で説明します)。自社が該当しそうかどうかは、まず直近の申告書の数字で当たりをつけてください。実際の判定は、その課税事業年度の決算で行います。
そして、税額がゼロであることと、申告しなくてよいことは別の話です。この点は本記事の6.で詳しく取り上げます。「うちは関係ない」で終わらせず、提出義務そのものがあることを確認しておいてください。
3.税額は「基準法人税額-年500万円」×4%で計算!
防衛特別法人税の税額は、基準法人税額から基礎控除額(年500万円)を差し引いた金額に、4%の税率を掛けて計算します。
条文で確認すると、課税標準となる「課税標準法人税額」は、各課税事業年度の基準法人税額から基礎控除額を控除した金額とされ(防衛財源確保法第13条第2項第1号)、税額はその課税標準法人税額に100分の4の税率を乗じて計算した金額とされています(同法第14条第1項)。
計算の手順は次の3ステップです。
① その事業年度の基準法人税額を計算する
② 基準法人税額から基礎控除額(年500万円)を差し引く
③ 差し引いた残額に4%を掛ける
具体的な数字で見てみましょう。いずれもグループ通算制度を適用していない、事業年度が12か月の法人を前提としています。
① 基準法人税額が400万円の場合……400万円は500万円以下なので、課税標準法人税額はゼロ。防衛特別法人税は0円です。
② 基準法人税額が1,000万円の場合……(1,000万円-500万円)×4%=20万円
③ 基準法人税額が3,000万円の場合……(3,000万円-500万円)×4%=100万円
税率は4%ですが、課税のベースは「所得」ではなく「法人税額」です。所得の金額に4%を乗じるわけではない点に注意してください。
なお、特定同族会社の留保金課税(法人税法第67条第1項。同族会社のうち一定のもの=特定同族会社が、利益を社内に貯め込んだ場合に、通常の法人税とは別に課される税額のことです)の適用を受けている法人は、計算が二段階になります。
もっとも、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社については、留保金課税の対象となる特定同族会社の範囲が、大法人による完全支配関係があるもの、複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されているもの、投資法人、特定目的会社、および大通算法人(グループ通算制度を適用しているグループ内に一定規模以上の法人がある場合の各通算法人をいい、自社の資本金が1億円以下でも該当します)に限定されています(法人税法第67条第1項、第66条第5項・第6項)。これらに当たらない中小企業では、そもそも留保金課税は適用されません。その場合、以下の二段階の計算は不要です。
留保金課税の適用を受けている法人の課税標準法人税額は、次の2つの金額の合計額とされています(防衛財源確保法第13条第2項第2号)。
① 加算前基準法人税額(基準法人税額から留保金課税により加算された金額を差し引いた金額)から基礎控除額を差し引いた金額
② 基準法人税加算額(基準法人税額のうち留保金課税により加算された金額)から基礎控除残額を差し引いた金額
基礎控除額の年500万円は、まず①の通常部分から使い、使い切れずに余った部分(これを基礎控除残額といいます)を②の留保金課税部分に充てる、という順序です。
4.「基準法人税額」は、申告書に出てくる法人税額ではない!
計算のスタート地点になる「基準法人税額」は、申告書の最後に出てくる納付すべき法人税額とは異なります。ここが実務で最も誤解されやすい点です。
防衛財源確保法第10条第1号は、内国法人の基準法人税額を、法人税法その他の法令の規定により計算した法人税の額(附帯税=加算税や延滞税など、本税に付随して課される税を除きます)としたうえで、一定の税額控除の規定を適用しないで計算すると定めています。国税庁の資料が挙げている、適用しないこととされている規定は次の8つです。
① 所得税額の控除
② 外国税額の控除
③ 分配時調整外国税相当額の控除
④ 仮装経理(実際より利益を多く見せる会計処理のことです)に基づく過大申告の場合の更正に伴う法人税額の控除
⑤ 税額控除の順序
⑥ 戦略分野国内生産促進税制のうち特定産業競争力基盤強化商品に係る措置の税額控除
⑦ 通算法人の仮装経理に基づく過大申告の場合等の法人税額(⑥の措置に係る部分に限られます)
⑧ 外国関係会社等に係る控除対象所得税額等相当額の控除
わかりやすい例が①です。預金利息や配当から源泉徴収された所得税は、法人税の申告で法人税額から差し引きます(所得税額控除)。しかし防衛特別法人税の計算では、この控除をする前の金額を使います。したがって、所得税額控除などを受けている法人では、基準法人税額はこれらの控除を適用した後の法人税額よりも大きくなります。控除を受けていない法人では、基準法人税額と法人税額は一致します(いずれも中間納付額を差し引く前の金額です)。
適用しないこととされている規定は、条文に限定して列挙されています。自社が受けている税額控除がこの8つの規定に当たるのかどうかは、申告書を見ながら一つずつ確認する必要があります。
では、基準法人税額の計算で適用しないこととされた外国税額控除などはどうなるのでしょうか。防衛特別法人税の側にも、次の4つの税額控除が用意されています(防衛財源確保法第16条から第19条)。なお、この4つの中に、預金利息や配当から源泉徴収された所得税を控除する仕組みは含まれていません。
① 外国税額の控除
② 分配時調整外国税相当額の控除
③ 控除対象所得税額等相当額の控除(外国関係会社等に係るものです)
④ 仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除
これらを適用する順序も定められており、分配時調整外国税相当額の控除、控除対象所得税額等相当額の控除、仮装経理に基づく過大申告の場合の更正に伴う防衛特別法人税額の控除、外国税額控除の順に行います(同法第20条)。ただし控除には限度がありますので、控除しきれるかどうかは個別の計算によります。
5.基礎控除500万円は「年」なので、設立初年度などは月割りになります
基礎控除額は年500万円ですが、課税事業年度が1年に満たない場合は月割りで縮小します。
条文では、通算法人以外の法人の基礎控除額は年500万円とされ(防衛財源確保法第13条第3項第1号)、課税事業年度が1年に満たない場合には「500万円を12で除し、これに当該課税事業年度の月数を乗じて計算した金額」に読み替えると定められています(同条第8項)。ここでいう月数は暦に従って計算し、1月に満たない端数が生じたときは1月に切り上げます(同条第9項)。
月割りになる場面は、実務では次のようなケースです。
① 会社を設立した初年度で、設立日から最初の決算日までが12か月に満たない場合
② 決算期を変更したことにより、変更した事業年度が12か月より短くなった場合
③ 事業年度の途中で解散した場合など
たとえば最初の事業年度が7か月であれば、基礎控除額は500万円の12分の7に縮みます。500万円がそのまま使えると考えて計算すると、税額を過小に見積もることになります。設立1期目から大きな利益が出るスタートアップでは、実際に差が出る可能性があります。
もう一つ注意したいのが、グループ通算制度(企業グループ内の各社の所得と欠損を通算して法人税を計算する制度です)を適用している場合です。通算法人については、500万円を各通算法人の基準法人税額の比で配分した金額が、それぞれの法人の基礎控除額となります(防衛財源確保法第13条第3項第2号)。1社あたり500万円ではなく、グループ全体で500万円という考え方です。子会社を複数抱えるグループでは、この違いが税額に直結します。
6.税額がゼロでも、申告書の提出必須!
防衛特別法人税は、計算した税額がゼロであっても申告書を提出しなければなりません。
防衛財源確保法第25条第1項は「法人は、各課税事業年度終了の日の翌日から二月以内に、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない」と定めており、税額がない場合に提出を免除する規定は置かれていません。国税庁のe-Taxのお知らせ「防衛特別法人税の創設に関するご案内・留意事項について」でも、防衛特別法人税額が0であっても申告は必要であると明記されています。本記事の2.で挙げた、防衛特別法人税確定申告書の提出が不要とされる法人を除けば、提出は必要とお考えください。
期限をまとめると次のとおりです。
① 申告書の提出期限……課税事業年度終了の日の翌日から2月以内(防衛財源確保法第25条第1項)
② 納付期限……申告書の提出期限まで(確定申告分は同法第30条、中間申告分は同法第29条)
③ 申告期限の延長を受けている場合……延長された提出期限(同法第25条第4項)
③は見落とされやすいところです。法人税について申告期限の延長の特例(法人税法第75条、第75条の2)の適用を受けている法人は、防衛特別法人税の申告期限も同じように延長されます。法人税だけ3月以内で、防衛特別法人税は2月以内、という別々の期限になることはありません。定款で株主総会の開催時期を定め、申告期限を1か月延長している法人は、法人税と同じ期限で防衛特別法人税も申告することになります。
なお、防衛特別法人税は法人税・地方法人税とは別の申告書を作るのではなく、法人税申告書の別表等を使って一体で申告します。国税庁の手続案内も「法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」という名称になっており、3つの税目が同じ手続の中に位置づけられています。
7.中間申告は令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度からスタート!
防衛特別法人税にも中間申告の制度がありますが、実際に始まるのは令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度からです。
国税庁のパンフレット「防衛特別法人税が創設されました」では、改正法の経過措置(令和7年法律第13号 附則第62条第2項)を根拠として、令和9年4月1日以後に開始する課税事業年度において、法人税の中間申告書を提出すべき法人は、防衛特別法人税についても中間申告書を提出する必要があるとされています。最初の課税事業年度には、中間申告の計算のもとになる前課税事業年度がありません。
では、誰が中間申告をすることになるのでしょうか。防衛財源確保法第21条第1項は、法人税法第71条(外国法人については同法第144条の3)の規定による申告書を提出すべき法人は防衛特別法人税の中間申告書を提出しなければならないと定めています。防衛特別法人税に独自の金額基準は設けられておらず、法人税の中間申告義務にそのまま連動する形です。
その法人税の側では、前事業年度の法人税額を月数で按分した金額が10万円以下である場合や、その金額がない場合などには、中間申告書の提出を要しないとされています(法人税法第71条第1項ただし書)。また、設立後最初の事業年度(適格合併により設立された法人を除きます)は、そもそも中間申告の対象となる事業年度から除かれています(同項)。設立したばかりの法人は、この扱いになります。国税庁の案内でも、前事業年度の確定分法人税額が20万円を超える場合に予定申告(前期の実績をもとに行う中間申告のことです)および納税の義務が発生すると説明されています(事業年度が12か月の場合、20万円を12で割って6を掛けると10万円になるためです)。
もう一点、納める金額についてです。中間申告で納める金額は、前課税事業年度の防衛特別法人税額を月数で按分して計算します(防衛財源確保法第21条第1項第1号)。したがって、前課税事業年度の防衛特別法人税額がゼロであれば、中間で納める金額もゼロです。この場合でも、法人税の中間申告書を提出すべき法人であれば、防衛特別法人税の中間申告書は提出することになります。
3月決算法人を例にとると、令和9年4月1日に始まる事業年度、つまり防衛特別法人税としては2回目の課税事業年度から中間申告の対象となり、その提出期限は令和9年11月30日です(対象になるのは、法人税の中間申告義務がある法人に限られます)。前課税事業年度に防衛特別法人税が発生した法人では、法人税・地方法人税の中間納付に上乗せされますので、資金繰りの見積もりを見直しておくことをおすすめします。
まとめ
防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から始まっている、法人税額をベースとする新しい国税です。税率は4%、基礎控除は事業年度が12か月の法人で年500万円です。基準法人税額が基礎控除額以下であれば税額は生じませんが、資本金や業種による線引きはなく、税額がゼロでも申告書の提出は必要です。
まず取り組んでいただきたい実務対応は、次の2つです。
① 自社の最初の課税事業年度がいつからいつまでかを特定し、その申告期限をスケジュールに入れておく。決算期によって初回の時期は大きく異なり、たとえば3月決算と12月決算では9か月ほどずれます。
② 直近の法人税申告書を見て、本記事の4.で挙げた8つの規定をいずれも適用しないで計算した法人税額(基準法人税額)が500万円(事業年度が12か月の場合)を超えているかどうかを確認する。超えている場合は、自社の最初の課税事業年度において防衛特別法人税が発生する可能性があります。
そのうえで、設立初年度や決算期変更で事業年度が12か月に満たない場合は基礎控除が月割りになること、グループ通算制度を適用している場合は500万円をグループで分け合うことの2点を、あわせて点検しておくと安心です。
「うちの会社は防衛特別法人税を納めることになるのか判断がつかない」「基準法人税額をどの数字で見ればよいのかわからない」「設立したばかりで最初の事業年度が12か月に満たないが、基礎控除はいくらになるのか知りたい」といったご相談は、渋谷区恵比寿の税理士法人小原会計までお気軽にお問い合わせください!
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