「相談役・配偶者も対象?」みなし役員の給与支給で損金算入するために必要なこと
2025/03/28
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
会社経営において、役員給与の設定とその税務処理は非常に重要なポイントです。
特に、税務調査において指摘されやすい部分でもあり、正しいルールの理解と手続きが求められます。
この記事では、役員給与が原則として損金不算入とされる理由から、「定期同額給与」「事前確定届出給与」といった損金算入が認められるケースの要件、そして見落としがちな「みなし役員」への対応まで、税務上のリスクを避けるためのポイントをわかりやすく解説します。
1.役員給与が損金にできない理由とは?
法人税法上、従業員への給与や賞与は損金算入が認められているのに対し、役員への給与や賞与(役員給与)は原則として損金不算入とされています。
これは、会社の経営者が自らの報酬を恣意的に操作することによって利益を調整し、法人税を軽減する行為を防ぐためです。
そのため、税務上は「経営者の給与は厳格なルールのもとでのみ損金にできる」という建て付けになっています。
2.損金算入が認められる役員給与の3類型
法人税法では、以下の3つのいずれかに該当する役員給与であれば、不相当に高額な部分を除き損金算入が認められます。
・定期同額給与
・事前確定届出給与
・業績連動給与(※上場企業に限定)
中小企業では、1と2の制度を活用するのが一般的です。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。
①定期同額給与とは?
定期同額給与とは、毎月同じ金額を継続して支給する形の役員給与です。以下の2つの要件を満たす必要があります。
・1か月以内の一定期間ごとに支給されていること
・事業年度内における各支給時期の支給額が原則として同額であること
●通常改定とは?
役員報酬の改定は、決算終了後の定時株主総会などで行う「通常改定」であれば認められます。
その条件は次の通りです。
・事業年度開始から原則3か月以内に改定されている
・改定前後ともに毎月同額である
具体例:
5月25日に定時株主総会を開催し、役員報酬を従来の50万円から60万円に改定。
その後、6月30日から60万円で支給を開始した場合、適正な改定と判断され、損金算入が可能です。
●業績悪化による減額も可能?
業績が著しく悪化した場合は、次のような理由に限り、減額改定も認められます(業績悪化改定事由)。
・財務指標の悪化が客観的に確認できる場合
・倒産のリスクが現実的に迫っている場合
・株主や債権者など利害関係者との関係上、減額が不可避な場合
ただし、具体的かつ客観的な資料(取締役会議事録など)による裏付けが必要です。
単に「資金繰りが苦しい」や「業績が厳しい」というだけでは、原則損金算入が認められません。
②事前確定届出給与とは?
事前確定届出給与とは、支給額・支給日を事前に定め、それを税務署に届け出たうえで支払う役員給与です。
特に、賞与の支給や、非常勤役員への年1回の報酬などに使われます。
要件は以下の通りです。
・株主総会で支給額・支給日を決議し、議事録を作成する
・その決議日から1か月以内に、所定の届出書を税務署へ提出
・届出書に記載した通りの金額・日付で支給されていること
仮に、届出書を出していない場合や、実際の支給が届出内容とズレた場合は、その全額が損金不算入となります。
書類ミスや日付のズレも致命的な税務リスクとなるので要注意です。
3.【重要】「みなし役員」にも注意を!
ここで意外と見落とされがちな「みなし役員」についても触れておきましょう。
①みなし役員とは?
法人税法上、形式的な役職にかかわらず、実質的に会社経営に関与している人物は「役員」とみなされます(税法固有の役員)。
具体的には、以下のような人が該当します。
・「相談役」「顧問」などの肩書きで経営に関わっている人
・同族会社の従業員で、一定の株式を保有し経営判断に影響を与えている配偶者や後継者など
このような人々は、法人税法上では正式な役員と同様に扱われるため、賞与などを支給する際には、事前確定届出給与の手続きが必須です。
②届出を忘れると…
「相談役に報酬を出したが、届出をしていなかった」
「経営に関与している配偶者に賞与を支払ったが、税務署へ届け出ていない」
このようなケースでは、支払った賞与の全額が損金算入できなくなるため、大きな税務リスクを抱えることになります。
形式だけで判断せず、実質的な経営関与の有無を冷静に見極める必要があります。
4.適切な給与設計で税務リスクを回避!
役員給与の取り扱いは、法人税法において非常にシビアに扱われています。
「毎月同額」「事前に決めて届け出」「実質的に経営に関わっている人にも届出が必要」など、守るべきルールは細かく明確です。
経営者自身が自らの報酬を決める立場にある以上、税務署としても「経費にしていいかどうか」を厳格に判断するのは当然とも言えます。
損金算入できる給与額の見極めには、経営計画や資金繰りの見通しに基づく報酬設計が大切です。
まとめ
・役員給与は原則損金不算入。損金算入には厳格なルールがある。
・「定期同額給与」や「事前確定届出給与」に該当すれば税務上損金にできる。
・業績悪化による減額改定には客観的な資料が必要。
・「みなし役員」に賞与を支給する場合も、正式な役員と同様に届出が必要。
・手続きや支給タイミングのミスで全額損金不算入となるリスクがある。
税理士法人小原会計では、役員報酬の適正な設定や税務対策について、個別のご相談を承っております。
渋谷・恵比寿エリアで会社を経営されている方、またこれから法人設立をお考えの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください!
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