従業員の手当・現物給与の課税まとめ!知らないと損する税務知識
2025/02/18
渋谷区恵比寿でスタートアップ、起業、会社設立支援を行っている税理士法人小原会計の公認会計士・税理士の小原です。
従業員に対する手当や現物給与の支給は、企業の福利厚生やモチベーション向上に役立ちますが、税務上の取り扱いを正しく理解することが必要です。
今回は、「背広の支給」「成績優秀者への海外旅行」「人間ドックの費用負担」の3つのケースについて、所得税の課税関係をわかりやすく解説します。
1. 背広の支給による経済的利益|給与課税が発生するケース
①会社が従業員にスーツを支給する場合、課税対象?
スーツ(背広)は仕事中だけでなく私服としても着用できるため、所得税法上の非課税対象にはならず、給与所得として課税されます。
これは、スーツが会社の業務上必要なものとみなされる「制服」や「作業服」には該当しないためです。
②制服の支給が非課税となる理由
所得税法施行令第21条第2号、第3号では、次のような制服の支給を非課税としています。
・警察官や消防職員など、公務員の制服
・鉄道会社の制服や作業服など、業務上の着用が義務付けられているもの
また、所得税基本通達では、これに加えて、事務服や作業服についても一定の要件を満たせば非課税と認めています。
③非課税となる制服・作業服の要件
・勤務中のみ着用し、私用では使用しないこと
・職場の全員(または特定業務の従事者全員)に支給されること
・着用者が一目でその職場の従業員と判別できるものであること
したがって、スーツのように業務中・私用の区別なく着用可能な衣類は、非課税の要件を満たさず、給与課税の対象となります。
2. 成績優秀者を対象とした海外旅行|給与課税が発生するケース
①成績優秀者に対する海外旅行は課税対象?
例えば、業績優秀者を対象に、抽選で〇泊〇日の海外旅行(費用〇〇万円)を提供する場合、その経済的利益は給与所得として課税されます。
②抽選で選ばれるのに給与所得になる理由
旅行の参加者は抽選で選ばれるため、一見すると「偶然の利益」のように見えますが、以下の理由で勤務の対価とみなされます。
・旅行の対象者が「成績優秀者」に限定されている
・業績を上げた従業員への報奨として支給される
・抽選方式であっても、業績を上げた人にのみチャンスが与えられる
このように、企業が従業員の勤務成績に応じて付与する経済的利益は、給与所得と認定されるため、課税対象となります。
3. 人間ドックの費用負担|非課税となるケース
①会社が従業員の人間ドック費用を負担する場合の取り扱い
企業が従業員の健康管理を目的として健康診断や人間ドックを実施し、その費用を会社が負担する場合、基本的には非課税となります。
②非課税となる条件
・全従業員または一定の年齢以上の希望者全員が受診できること
・健康管理を目的としており、特定の役職者や一部の従業員のみを対象としないこと
・会社が契約した医療機関で実施すること
会社が公平な基準で従業員全員に対して実施する健康診断は、法律上の義務にも関係するため、従業員が受け取る経済的利益とはみなされず、給与課税の対象になりません。
③逆に課税対象となるケースは?
・役員や特定の従業員のみを対象に費用を負担する場合
・会社が義務付けられている範囲を超えて、高額な検査を受けさせる場合
4.まとめ|どのケースが給与課税になる?
経済的利益 | 課税対象 | 非課税条件 |
---|---|---|
背広の支給 | 課税 | 私服として使用可能なため |
成績優秀者の海外旅行 | 課税 | 勤務の対価とみなされるため |
人間ドックの費用負担 | 非課税 | 会社の健康管理目的で、全従業員を対象としている場合 |
企業の福利厚生としてさまざまな手当や現物給与が提供されますが、税務上の取り扱いを誤ると、従業員に余計な税負担が生じる可能性があります。
そのため、どのような形で支給するか、税務リスクをしっかり考慮することが重要です。
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税理士法人小原会計/小原崇史公認会計士事務所
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